米国はもちろん、世界中の消費者に打撃となるだろう。石油は依然としてあらゆる商品の価格形成要素であり、中でも食品、電子機器、衣類、医薬品などに大きく影響する。原油価格の上昇は、トランプ関税やベネズエラ侵攻、グリーンランドやキューバへの脅威に翻弄されてきた投資家にもさらなるショックをもたらす。
世界のエネルギー情勢にいくらか確実性があったところで、それは不確実性を消し去るものではない。むしろ不確実性は大きくなるばかりだ。
輸出国もリスクを共有
湾岸諸国は、地域の治安がホルムズ海峡と直結していることをかねてよく知っている。各国の経済も繁栄も、治安そのものですら相当に、この狭い海峡を通じた石油・天然ガス輸出に依拠している。1980年代のイラン・イラク戦争中に両軍がペルシャ湾を航行するタンカー等の船舶を攻撃した、いわゆる「タンカー戦争」は、ホルムズ海峡を封鎖する試みにさまざまな方法があることを証明した。
船舶、機雷、ミサイルに加え、今やドローンも軍事封鎖や攻撃の手段であることが明らかだ。タンカー戦争では400隻余の船舶が損害を受けたが、商業輸送は減少したものの80年代を通じてほぼ継続され、戦争終盤には米国による保護下に入った。
また、タンカーを直接狙った軍事攻撃に関連するリスクには、海軍艦艇や正体不明の船舶による拿捕や乗組員への嫌がらせもある。イラン・イラク戦争では保険会社の役割も浮き彫りになった。保険料が50%以上も跳ね上がったため、一部企業は輸送ルートを変更せざるを得なかった。
こうした影響のいくつか、特に保険料の影響は、今回の戦争でも顕著だ。本稿執筆時点で、イラン船籍と中国船籍の船舶を除くほとんどの商船が海峡通過を停止しているが、保険料の急騰も一因となっている。タンカー戦争中は湾岸諸国の石油・ガス輸出ターミナルも一貫して標的となった。今回もそうならない保証はない。
イランが海峡封鎖の脅しを繰り返してきた結果、湾岸諸国はパイプラインを建設して海峡を迂回するようになった。サウジアラビアのヤンブー・パイプライン(紅海向け)、UAEのフジャイラ・パイプライン(オマーン湾向け)の他、イランもゴレ・ジャスク・パイプラインと輸出ターミナルのあるオマーン湾北岸のバンダル・エ・ジャスク向けパイプラインを有している。
ただ、たとえばサウジとUAEの2つのパイプラインの輸送量は、通常ホルムズ海峡を通過する日量2100万バレルのせいぜい4分の1にすぎない。つまり、十分とは言えない。
ペルシャ湾で起こった新たな戦争は、その結果がどうあれ、すでに世界のエネルギー安全保障にとって大きなリスクとなっている。


