大幅な価格上昇となった場合、最大の受益者となる可能性が高い国の筆頭はロシアである。ロシアは自国経済もウクライナ戦争の遂行においても炭化水素資源の輸出、とりわけ原油に依存している。イランを重要な同盟国とみなして、そのドローン技術と製造工場を支援してきた存在でもある。
その他の勝者は、イランと協力関係になく、ホルムズ海峡の内側に位置しない石油輸出国だろう。前述した以外の石油輸出国機構(OPEC)加盟国とブラジルなどの「OPECプラス」構成国、オーストラリア、ガイアナ、カナダ、米国などだ。ただし、米国とカナダでは得られる利益は主に石油産業そのものと関連サービスに集中し、燃料価格の上昇は消費者には歓迎されない。実際のところ、今年11月の米中間選挙に向けてトランプと共和党にとって深刻な政治的負担となり得る。
では、敗者となる可能性が最も高いのはどこだろうか。答えは簡単だ。東アジア、インド、そして影響の度合いはやや低いものの、欧州である。
中国、日本、韓国、台湾は、際立って大きな不利益を被るだろう。中国は世界最大の石油輸入国であるだけでなく、輸入量の半分以上が湾岸諸国、中でもサウジアラビア、イラン、イラク、クウェート(順不同)からだ。しかし、残る3カ国はさらにリスクが高い。韓国は石油輸入の70%が、日本は80%がホルムズ海峡経由で、主にサウジアラビア、UAE、クウェートから供給されている。ホルムズ海峡は東アジアの「石油運河」と呼べる存在なのだ。
インドも深刻な悪影響を受ける恐れがある。原油輸入の45~50%を湾岸産油国のイラク、サウジアラビア、UAEに頼っている上、米国の制裁でロシア産原油の国内精製量を削減せざるを得なくなったため、2026年現在、湾岸依存度はさらに高まっている。
原油輸入量で世界第2位の欧州連合(EU)は、イラン攻撃関連リスクの直接的な影響は少ないものの、全く影響がないわけではない。EUは2027年までにロシア産原油を完全に排除する計画で、ロシア産の大幅削減(現在は1~2%に低下)で生じた供給ギャップを埋める上で、湾岸諸国からの輸入は重要だ。域内への主要な原油供給国は現在、ノルウェー(14.6%)、米国(14.5%)、カザフスタン(12.2%)が上位を占め、サウジアラビアとイラク(約10%)、その他の非湾岸産油国と続いている。
こうした分析は参考になるが、ここで一点、懸念がある。原油価格が1バレル=100ドルを超えた場合、世界経済にどのような影響を及ぼすのか。


