ゴーストが現代でも重要である理由
はるか昔に起きた遺伝的融合が、いったいなぜ、そんなに大事なのか、と思っている人も多いだろう。答えの一つは、プレシジョンメディシン(精密医療)にある。もっと具体的に言えば、すべての人がまったく同じ進化上の軌跡を共有しているのだと仮定したら、身体の働き方に関する、重要だが微妙な差異の多くを見落としてしまいかねない。例えば、以下のようなものだ:
・免疫反応。20%に寄与するゴーストDNAの一部は、ウイルスに対する体の反応を司っている。
・代謝。一部の「ゴースト」遺伝子は、脂質と糖の処理を促進する。これは、現代の食事への対応に影響を及ぼす。
・脳の構造。この大昔の融合が、ヒトの大脳新皮質の発達にどう影響したかについては、まだ調査が始まった段階にすぎない。
今回の発見をきっかけに、ゴースト集団のゲノム研究では、新たな領域も活気づいている:
・遺伝学者たちは、大昔に起きた融合のかすかな痕跡を検出するべく、COBRAAなどの手法に磨きをかけている。
・考古学者たちは、遺物に対する新たな関心を踏まえて化石産出地を調べており、そこからゴースト系統に関する知見が得られる可能性がある。
・大昔のDNAを分析するテクニックも改良されている。いつの日か、当の「ゴースト」の骨の断片が見つかり、いまだ謎に包まれている私たちの20%が、ついに明らかになるときが来るかもしれない。
だが、おそらく最も重要な点は、こうした研究により、「ホモ・サピエンスは単一の系統だけを起源とする」という見解に疑義が呈されていることだろう。遺伝学者や進化生物学者のあいだでは、長らく忘れ去られていた融合、いったん分岐した人類集団のあいだで生じた融合の産物として、種としての我々をとらえる見方が勢いを増している。一方の集団は、発見可能な痕跡を残さずに姿を消したが、その遺伝子のこだまは、あなたの体をかたちづくるすべての細胞の中で、いまも響いているのだ。


