「人間の労働力」の展望
一見すると、これは人間の労働力にとって明るい材料に見える。ヒューマノイドロボットが実用的に有効になるまでには、まだ年数を要するからだ。AIエージェントの利用が拡大するにつれ、下請けとしての人間の労働力の利用も増えるだろう。人間の労働力が重要視され、AIが人間の雇用を完全に奪うわけではないことを喜ぶべきだ、というわけである。
だが、その幸福な物語は長続きしない。
少しずつ、人間の労働力を必要とする領域は減っていく。AIの進歩は、人間の労働力が提供できる魔法や秘伝のタレのようなものにまで入り込んでいくだろう。AIエージェントは、人間の労働力を関与させる必要がなくなり、別のAIシステムに命じるだけで済むようになる可能性が高い。
これは特に重要である。AIエージェントが人間の労働力と下請契約を結ぶことは、人間の労働力にとって追い風になると推測する向きがあるからだ。AIがすでに人間の仕事を奪っているのだから、AIエージェントが人間に寄るのは有望な兆候だ、という考えである。残念ながら、それはおそらく短期的な押し上げにとどまる。
手強く荒っぽい上司
AIエージェントとAIが雇う人間の労働力の間には、大きな緊張が生じるだろう。
例えば、住宅ローンの融資可否の評価の一環として、AIエージェントがある人間を雇い、特定の地域の住宅を見て回らせるとしよう。AIはすでに住宅の写真を調べているが、住宅の実際の状態を見極めるには不十分だ。ゆえに、AIエージェントは住宅検査員を探し出し、現地作業を行わせる。
人間をレンタルしてタスクを担わせた後、その人間がずさんな仕事をしたとしたらどうなるか。人間は中途半端な結果をAIエージェントに渡す。さて、どうするか。AIエージェントは、その人間に対して「ずさんな仕事なので満額は支払わない」と告げる。人間は憤慨する。弁護士を立て、AIエージェントを訴える。
しかし、AIを訴えるのは筋が通らない。AIには現時点で法人格などの法的な地位がないからだ。人間はAIの開発者、あるいはAIエージェントを利用している人物を訴えなければならない可能性がある。混乱と困惑を招く。責任の連鎖は不明瞭だ。
同様の問題として、その人間の労働力が法的に請負業者なのか、それともAIエージェントの従業員なのか(すなわち労働法、税金、その他の影響が絡む)という点もある。さらに、AIエージェントが労働法に違反する形で人間の労働力を不当に扱ったらどうなるのか。法的・倫理的ジレンマが折り重なる難題が形成されつつある。どう展開するかは時が教えるだろう。


