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2026.03.23 16:00

「現場の暗黙知」をAIが継承する時代へ――人に寄り添うウェアラブルが日本の現場力を進化させる

これから先の未来を担う人々に着実に受け継がれるべきもの。それは日本各所のさまざまな現場で積み上げられてきた、暗黙なるものを含んだ「貴重な知」である。東京都の「ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業」に採択されたフェアリーデバイセズの取り組みは、希望そのものだ。


人間が何かしらの価値を生み出せるとして、その源泉となるものは何だろうか。機を見て適切な行動が取れる「思考や判断」、それらを積み重ねることで到達できる「進化や成熟」が挙げられるのではないだろうか。

今、AIに代表される先進技術には、人間の「思考や判断」「進化や成熟」に寄り添い、支えて、次世代への「知の継承」にまで貢献していくことが期待されている。

現場作業の効率化、暗黙知の形式知化を見据えたデバイス

「私は『人の心に寄り添うモノの温かさ』に気づいたのです」

藤野真人は東京大学の大学院を中退した2007年に、フェアリーデバイセズ(東京都文京区湯島)を設立している。学部時代に生物情報工学、院生時代に医科学を学んできた藤野が起業に至った契機は、病院での研修だった。手術を受ける女の子のそばに彼女が大切にしていたクマのぬいぐるみが置かれていたのだという。医療機器や器具が静かに並んだ手術室の真っただなか、クマが女の子に寄り添っている光景に胸を衝かれた。

「機械は人に寄り添うことができないのだろうか。使う人の心を温かくする技術を開発して、人を励ます存在へと機械をアップグレードできないだろうか。そうした想いが湧いてきました。あのときの衝動がフェアリーデバイセズを生み出したと言えるでしょう」

藤野真人 フェアリーデバイセズ 代表取締役 CEO/CTO
藤野真人 フェアリーデバイセズ 代表取締役 CEO/CTO

温かいモノがもたらした衝撃は今、ひとつのウェアラブルデバイスに結実している。

「首掛け型ハンズフリーデザインの『THINKLET®︎』です。あらゆる工場、建設業、さまざまな機器の保守・メンテナンス、物流運輸といった現場作業のデジタルトランスフォーメーションを推進します。熟練者の知見や技能をデータ化して新人に伝承するなど、人とAIの協働によって多様な現場の生産性を飛躍的に向上させることが可能です」

「THINKLET®︎」は頭に付けたり、眼鏡のように顔面に装着するタイプではないので身体負荷が非常に軽微。人間工学に基づいたフォルムを有し、軽量で、作業視野をさえぎることなく、不意にどこかにぶつけてしまう心配もない。何より、人に寄り添うウェアラブルデバイスのあり方として優れている。

「そこに広角カメラを搭載し、ウェアラブルデバイスとしては世界ではじめて5chマイクアレイ(複数のマイクで音を捉え、音の到達時間の違いを利用して音源の方向を推定。この情報をもとに特定の方向からの音を強調し、不要なノイズの抑制も可能)を内蔵しています。すなわち、現場作業時の手元映像を一人称視点で取得し、騒音下でも発話をクリアにとらえることができます。そして、LTE通信機能を有しているので、Wi-Fiがない環境でもMicrosoft TeamsやZoomなどのビデオ会議サービスを通じて遠隔地とつながれるのです」

さまざまな作業現場において一人称データの収集と共有を可能にするウェアラブルデバイス「THINKLET®︎」。広角カメラ、高性能マイクアレイ、LTE通信機能、GPS、加速度センサー、環境センサーを網羅し、映像・音声・位置・環境といった複数の情報をリアルタイムに取得可能。2018年に誕生している。


頭部に装着するタイプや眼鏡タイプと違ってブレが少ない(映像酔いしにくい)映像をリアルタイムに共有しながら、現場と遠隔地で通話が可能となることのメリットは大きい。

「熟練作業者が遠隔支援することにより、現場作業の効率化・現場作業者の多能工化が実現します。また、単に熟練作業者の現場仕事を映像で残すだけでなく、暗黙知をデジタル化し、形式知化することまで可能です」

実際、ヤンマーエネルギーシステム社では、南極などの特殊な作業環境において高齢化が進む技術者の知見を若手に継承するための体制構築が「THINKLET®︎」を基盤にして行われている。また、ダイキン工業は「THINKLET®︎」でのべ30カ国以上・15,000件以上の作業映像を収集・解析しながら、熟練工の知見を有したAIの開発に取り組んでいる。

「フェアリーデバイセズは『THINKLET®︎』で得られたデータを用いて、大規模言語モデルや視覚言語モデル、検索拡張生成などを活用した業務支援AIの構築を各社と推進しています」

ウェアラブルなAIバディの可能性をブラッシュアップ

令和5年度、フェアリーデバイセズは東京都の「ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業」に採択された。同事業には再生可能エネルギーの基幹エネルギー化などに資する「ゼロエミッション枠」とAI、ロボティクス、情報通信、ヘルスケア・ライフサイエンスなど分野を問わない革新的な製品・サービスを対象とした「大学発ベンチャー・一般枠」が存在する。

フェアリーデバイセズが採択されたのは後者であり、その事業名は「一人一AI時代の人間行動認識 プラットフォーム開発」だ。

「これから先は少なくてもひとつ、あるいはふたつ以上のAIがひとりの人間の仕事や生活に寄り添う時代になっていくと考えられます。そうした時代を見据えて、ハードウェアとソフトウェアを連携させながら、機械が人間をより理解するための枠組みをつくりたいというのが本事業の狙いです」

人と機械(人工物)の関係性をAIを通してデザインし、まるで妖精(フェアリー)が宿っているかのように優しく、魔法のような働きをしてくれるデバイスを生み出してきたのがフェアリーデバイセズである。AIのバディ(相棒)が当たり前となる時代を目前にしている今、すでに成果を挙げつつある「THINKLET®︎」で培ってきたものを、さらに進化・発展させようとしている。

「ハードウェアとソフトウェアを連携させたプラットフォームは、これから先の未来において私たちだけでなく、さまざまな会社に採用していただきたいと考えています。例えば、ヘルメットをつくられている会社であれば、そのなかにハードウェアを入れ込んでいく。そして、スマートヘルメットの利用者に寄り添いながら、AIと連携したソフトウェアが有効に働いていくというイメージです。また、フォークリフトの運転席に取り付ければ、従来のドライブレコーダーよりも高次元の学習をAIにもたらすことが可能となります」

仕事から日常生活の現場まで、AIのバディ(相棒)が当たり前となる時代のハードウェア&ソフトウェアは多様な働きを見せていく。
仕事から日常生活の現場まで、AIのバディ(相棒)が当たり前となる時代のハードウェア&ソフトウェアは多様な働きを見せていく。

さまざまなシーンを想定しながら、装用時に不快な熱を発生することなく、バッテリーの容量を上げながら消費電力を抑えることに成功した「ハードウェアの開発(第一層)」。電子的映像安定化技術(EIS)によって、装着時に動きのある場面においてもブレずに安定的な動画を撮影できる「ミドルウェアの開発(第二層)」。一人称動画認識AIが現場作業の動画を自動認識して工程(単位動作)に分割できること、認識AI向け通信プロトコルが実用的に変動する通信環境下で認識AIの正しい認識に足る映像を伝送できること。これらを達成した「フロントエンドAIの開発(第三層)」。令和5年度以降、東京都に採択された本事業では上記の第三層までの開発が成されてきた。

「東京都の『ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業』に採択されたことにより、資金面での援助が得られたのはもちろんですが、事業が進んでいくなかでのさまざまな評価プロセスにおいて多様な有識者の方々からフィードバックをいただけたことも私たちとしては今後につながる大きな収穫になったと考えています」

この事業がもち得る市場性や社会的意義などを外部の有識者による俯瞰した視点からあらためてブラッシュアップすることができたという。

長い歳月を経て磨かれた「日本の現場力」が世界を救う

「今、私たちが迎えようとしているのは、ウェアラブルなAIバディが周辺のAIと各環境下で会話しながら人間に寄り添っていく時代です。その時代においては、まさにさまざまなプロダクトにAIが組み込まれていることでしょう。『THINKLET®︎』が対象としてきた工場や保守・メンテナンスといった現場で働く人のみならず、介護士や保育士、コンビニ店員などの接客業といった実に多様な人々がAIバディを身につけていくのではないでしょうか。そうした世界でフェアリーデバイセズは、これまでにデータがなかった現場のデータを取得し続け、AIの学習データとして活かしきり、各現場の生産性向上や知見伝承を支えていきたいと考えています」

 日本人の手先の器用さ、真面目さ、几帳面さ、安全へのこだわり、他者への思いやり、面倒見の良さといった数多くの美点が幾世代も積み重なり、受け継がれてきたことにより、「日本の現場力」は磨き込まれてきた。この「日本の現場力」を学習したAIパッケージは、今後において貴重および稀少な輸出品にもなり得るだろう。

「日本の現場力」を見事なまでに学習したAIパッケージが新時代の技術指導員として全世界を助けに行く。そのような未来が訪れようとしているのかもしれない。


ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業
都内のベンチャー企業や中小企業等が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化する革新的なプロジェクトを対象に、その経費の一部を補助することにより、大きな波及効果を持つ新たなビジネスの創出と産業の活性化を図る事業。

フェアリーデバイセズ
2007年創業。「Empower AI to Empower Humans」というビジョンのもと事業を展開。強みは、音声、動画、センサー等のマルチモーダルな情報を、AIが認識・分析できる構造化データに変換するプラットフォームを提供している点。現場で取得したデータを活用して産業向けAIの研究開発を実施している。


ふじの・まさと◎1981年生まれ。東京大学理科一類に入学、生物情報工学研究室を経て、2007年に同大学院医学系研究科医科学専攻を中退。同年、「人の心を温かくする助けとなる技術」を追い求めるべく、フェアリーデバイセズを設立。08年、最初のプロダクトとして6軸センサーが付属したパソコン用プラネタリウムソフトウェア「STELLAWINDOW」を開発し、日本や欧州を中心に販売。

Promoted by 日本総研 / text by Kiyoto Kuniryo / photographs by Shunichi Oda / edited by Akio Takashiro