ファッション

2026.03.25 11:00

ブルネロ・クチネリが語る映画に込めた「人間愛」と「尊厳」

これまで、自著『IL SOGNO DI SOLOMEO(ソロメオの夢)』(日本語版『人間主義的経営』クロスメディア・パブリッシング刊)を通して、自らの半生と思想を語ったブルネロ・クチネリ。2025年に製作された自身のドキュメンタリー映画には、さらにどのようなメッセージが込められているのか。作品への想いを聞いた。

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歴史に名を残す人物の多くは、その人生が映画として描かれるものだ。それは観客の心を打つドラマとして、世界へ広め、後世に伝えるべき価値が、彼らの人生にはあるからに違いない。

昨年イタリアで映画化されたブルネロ・クチネリの人生もまた、ドラマチックなエピソードと世界の人々が刮目すべき価値を間違いなく有している。そんな彼の人生を描いたのが、ドキュメンタリー映画『Brunello:Il Visionario Garbato(ブルネロ:礼節ある先見者 ※仮邦題)』(日本では今秋公開予定)である。

少年時代に身につけた 人間や自然への敬意

「私は人生を通し、美しさや調和、人間の尊厳に魅了されてきました。ソロメオ村の私たちの企業とともに、〈人間主義的資本主義〉と〈人間らしい持続可能性(ヒューマン・サステナビリティ)〉という“夢”を育み、実現させようとしてきたのです。そしてイタリアの片田舎から始まり、そんな夢を抱くに至るまでの経緯を人々に語ることができたら、と考えていたのです。

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それはイタリアの農家に生まれ育った少年の物語です。そこでは何より“敬意”が重んじられ、立派な人間として正しく振る舞うことが重要でした。父は100歳を迎えるその日まで、そういったことを繰り返し私に言い聞かせてくれたのです」

長年にわたる映画への思いと、映画にも描かれた少年時代、そして敬愛する父について、このように語るブルネロ・クチネリ。豊かな自然と家族に囲まれて過ごした少年時代。そこで心に刻まれた人間と自然への敬意は、やがて人文学の分野でも注目される独自の思想、人間主義的資本主義へと結実する。農村で過ごした少年時代は、彼にとって人間としての規範を学び、哲学の礎を築いた実り多き季節だったに違いない。

では、なぜそんな自身の人生を描くのに、映画を選んだのだろうか。

「偉大な芸術作品と同様に、映画とは社会を映す鏡であると、私は考えています。同時に映画自体が、人々を照らし、導き、進むべき道を示してくれる、光り輝く星のような存在でもあるでしょう。そんな映画は、ファッションにも通じる部分があると思います。

そもそもスタイルとは、常に“趣味(好み)”と密接に結び付いているもの。人々の趣味が、その人のスタイルにインスピレーションを与えることがあり、逆に他者に提案されたスタイルが、その人の趣味やセンス―美を求める人々の評価軸や感受性―を方向付けることもあるのです」

多くの映画は、実社会で起きた出来事や実在の人物から着想を得ている。だが時には、まったくのフィクションである映画が、優れた文学や音楽のように、実社会で生きる人々に多大な影響を与えることもある。そんな人々の思考を変え、社会を変革することもできる影響力こそ、ブルネ ロ・クチネリが映画に託したものだという。

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direction by Akira Shimada / photo by Stefano Schirato / text by Yasuhiro Takeishi

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