「今回の作品は、“利益(受け取ること)”と“贈与(与えること)”の間に調和を求める物語でもあります。それをこれほど特別なかたちで表現できるのは、私が最も尊敬し、敬愛する巨匠、ジュゼッぺ・トルナトーレ監督以外にはいないと思いました。そして、もうひとりの偉大な音楽の巨匠であるニコラ・ピオヴァーニとの抜群の相性と理解があったからこそ、両巨頭による製作が実現したのです」
こうして完成した映画には、ブルネロの人生にとって重要な教訓となったエピソードが描かれている。それは彼が少年のころ、父が貧しい一家を支えるべく勤めていた、工場の劣悪な労働環境と上司の侮辱的態度に耐えかね、子供に隠れて涙する姿を目にしてしまったことだ。
「この体験を通し、私はどんな理由があろうとも、人間を侮辱してはならないという、確固たる信念を胸に抱くようになりました。そして人間の尊厳を大切にする文化を広めるために働きたいと、少年のころから思うようになったのです」
映画を通して伝えたい 尊厳ある人生の美しさ
このようにブルネロ少年が抱いた信念は、自社工房だけでなく、生産にかかわるサプライチェーンを含めたすべての職人たちの労働環境を整え、正当な対価を保証するという、ブルネロ クチネリ社の企業理念へと発展。世界中の名だたる経営者が企業の理想型として学ぶべく、ソロメオ村を視察するまでになった。そうした人間の尊厳を重視する思想は、彼とその仲間が生み出すすべての服にも貫かれているのである。
「服を着ることとは、他者に対する礼節や優しさ、思いやりを表現することであると、私は確信しています。そして、私が考えるサステナビリティ―環境的なことにとどまらず、経済・文化・精神・倫理・そしてテクノロジーまでをも含む総合的な持続可能性―を体現するものとして、私たちの製品そのものが、ソロメオで日々私たちが取り組み続けている人文主義的なビジョンを語り、手に取った世界中の方々へ伝えてくれると信じているのです。1978年にそうした試みを始めてから、すでに半世紀近くもたってしまいました。
そういった意味でも、今回の映画が多くの人々、特に若者へ届くことを願っています。そして尊厳ある人生と尊厳ある仕事の美しさ、人間への愛と敬意、苦しみに直面したときも決して背を向けてはならないという、勇気の大切さを人々へ語りかける方法になりうると、私は確信しているのです」
ブルネロ クチネリ ジャパン
03-5276-8300
www.brunellocucinelli.com
ブルネロ・クチネリ◎1953年イタリア・ウンブリア州カステル・リゴーネ生まれ。1978年に起業。中間色中心で男性用しかなかったカシミア製ニットウェアを女性用にカラフルな色で製造し、一躍ファッション界で脚光を浴びる。1985年に妻の出身地である小村ソロメオに本社を移転。地元の人々を積極的に雇用することで、荒廃していた地域を活性化させながら世界的ブランドへと成長を遂げる。「人間主義的経営」と称する経営哲学の実践やそれに伴う地域貢献などにより、イタリア共和国功労勲章受賞のほか、多くの権威あるアワードを受賞。


