屋代陽平(以下、屋代):僕がこれまで出会った方のなかで“今後羽ばたくだろう”と感じたのは、人を巻き込めるクリエイターたちでした。自分を応援してくれる人を巻き込むことは大切ですが、それだけではなく、プロジェクトを広げて2倍3倍に膨らませていくにはスタッフや同業の仲間を巻き込んでいかなくちゃいけない。周りを巻き込むことは、ファンを巻き込むこと以上に必要かもしれません。
栗林:プロデューサー的な側面をもったクリエイターというイメージですか?
屋代:自らプロデューサーの視点をもったクリエイターもですし、一方で「原液」の強さでまわりを引きつけてしまうようなクリエイターも重要ですよね。
遠山啓一(以下、遠山):「原液」と「巻き込み力」を僕なりの言葉で言うと、「シーン」かなと。まずクリエイターが飯を食おうとすると、すでにある島に行って戦うか、自分で島をつくるかのどちらかしかない。前者は発想がゲーム攻略になりがちで、キャリアのつくり方がクリエイティブじゃなくて画一的。そういう意味において僕は自分でシーンや新しいキャリアのあり方をつくろうとするアーティストを応援したい。
経産省のエンタメ・クリエイティブ産業政策研究会の委員をやらせていただいたりして、クリエイティブ産業を取り巻く政策について議論する機会が最近は増えてきました。そのなかでも強く感じるのは、前者の話は政策立案と相性がいい。特にアニメや映画は。前例のある既存の商慣習のなかでKPIを設定して、それをベースに予算を立ててサポートするから。ただ、本質的に世界に通用するエンタメやクリエイター支援をする必要があると考えたときに、そういうやり方だけでいいんだっけ?と思うんです。新しい独自のシーンをつくることができるクリエイターをサポートすることも重要なんじゃないかと。
文化の輸出って、クリエイターひとりや作品ひとつが海外に行ったからできるものではない。日本が漠然と「クールな国」と見られている背景には、禅、自然、街の清潔さ、民藝、音楽──本当にさまざまな文化が層をなしてイメージがつくられていて、海外の人はその総体を見てクールだと感じるわけです。そう考えると、これから生まれるエンタメコンテンツも、既存のやり方のなかで予算を割いて一点突破するというアプローチだけでなく、新しいクリエイターが多様に連なった“厚み”も大事にすべき。その厚みがシーンです。そういう意味でも、僕は自分でシーンをつくれるクリエイターが強いと思う。


