NASAは2月27日、有人月探査を目指すアルテミス計画の新たなロードマップを発表した。この改編においては、「2028年までに米国人2名を月面に立たせる」というスケジュールはこれまでと変わらない。ただし、前年の2027年に地球周回軌道(LEO:低軌道)でのテスト・ミッションが新設された。これが新たな「アルテミス3」となる。
新アルテミス3では、イーロン・マスク率いるスペースXと、ジェフ・ベゾスのブルーオリジンがそれぞれ開発する月着陸機を、オリオン宇宙船にドッキングさせる軌道上テストなどが実施される。既存の計画にはなかったこの実証テストが設けられたことにより、ミッション遂行の確実性とクルーの安全性向上が図られる。
また、これまでアルテミス3とされてきた2028年の有人月面着陸ミッションは「アルテミス4」に改称される。その次のミッション(旧アルテミス4)からは、よりパワフルな新仕様のSLSロケット「ブロック1B」が投入される予定だったが、その開発は中止。現行の「ブロック1」を単一仕様として標準化し、後続ミッションにも継続使用する。これによって未知の技術開発に伴うリスクを排除し、機材の信頼性と安全性を向上させるとともに、既存ラインでの供給を安定化させ、契約企業の収益性を高める。その結果として、後続ミッションにおいてはSLSを10〜12カ月ごとに打ち上げることを目指す。場合によっては2028年にアルテミス4と5を実施し、1年で2度の有人月面着陸を行う可能性もあるという。
昨年12月にNASA長官に就任したジャレッド・アイザックマン氏は、これらの合理化によって2028年までに米国人を月面に戻すことを目指す。ただし、月面への帰還までに残されたわずか2年半の間に、地球低軌道での新たなミッションが追加されたことで、NASAをはじめ、機材開発を担う民間の主契約者やプロバイダーには、これまでよりタイトなスケジュールと、より厳密なタスクが課せられることになる。
SLS第2段「EUS」の開発中止
アルテミス計画が遅延している原因は主に2つある。ボーイングなどが主契約者を担う超大型ロケットSLSと、スペースXなどが開発する月着陸機の開発遅延であり、アイザックマン氏による今回の計画改編は、主にはこの2点への対応策といえる。
SLSは非常に複雑なロケットといえる。その端緒は2010年の「NASA授権法」にあり、米議会が定めた開発要件として、スペースシャトルの派生技術の活用、初期能力として地球低軌道に最大100トンのペイロード(宇宙船などの荷物)を輸送する能力のほか、その後の「進化的な設計」によって輸送能力を130トン以上に向上させることなどが課せられている。



