地球軌道上でのドッキング・テスト
これまでの計画では、月周回軌道上に到達したオリオンから月面にクルーを送迎する手段として、旧アルテミス3(2027年)と4(2028年)ではスペースXの「スターシップHLS」を使用し、旧アルテミス5(2030年)ではブルーオリジンの「ブルームーンMK 2」が予定されていた。
しかし、スターシップHLSの開発遅延が顕著化したため、ブルーオリジンはMK2と並行して開発を進めていた、無人輸送仕様の「ブルームーンMK1」を有人機に改造することを計画。「ブルームーンMK2-IL」と呼称されるこの機体であれば、2028年の新アルテミス4の有人月面着陸に間に合う可能性がある。現時点でMK2-ILはブルーオリジンから公表されておらず、NASAからも正式に選定されていないが、その開発が着々と進行していることをArs Technicaが報じている。
今回の改編で発表された新アルテミス3、つまり地球低軌道での事前テスト・ミッションでは、これらの月着陸機の航法、通信、推進、生命維持システムの実証試験のほか、オリオン宇宙船とのランデブー航行、さらには軌道上ドッキング・テストが行われる。従来の計画ではこのテストは予定されず、ぶっつけ本番で行われるはずだったが、この工程が新設されたことで新アルテミス4の成功率は飛躍的に高まるとNASAは考えている。
ただし、両社の月着陸機はどちらも複雑なシーケンスを必要とする。スターシップHLSの場合は月へ赴く前に、タンカーと呼ばれる姉妹機から地球周回軌道上で推進剤の補給を受ける必要がある。一方、ブルームーンMK2-ILの場合は軌道上補給の必要はないが、その代わりとして個々に打ち上げられる3機の「トランスファーステージ」と、地球低軌道上でドッキングする必要があると予想されている。
NASAとしては、2027年の低軌道ミッションでテストをクリアした機体を新アルテミス4の月面着陸機に選定し、両機ともテストをパスした場合は、その2機によって2028年中にアルテミス4と5を実施する可能性もあるという。いずれにせよ2機の開発を並行して進めることで、NASAは2028年の有人月面着陸を、トランプの任期中(2029年1月まで)に何としても成功させたいと考えている。


