NASAはこの規定を遵守するため、SLSのコアブースター(下段)や固体燃料ブースター(SRB)の直径をシャトルと同寸法とした。これはシャトルの組立ラインをそのまま活用し、コストを低減するためだ。4基搭載されるRS-25エンジンも、その多くはすでにスペースシャトルのミッションで使用されたものが再利用されている。
また、SLSの初期型ブロック1から拡張型ブロック1Bへのペイロードの向上は、第2段のアップグレードによって実現することをNASAは計画した。アルテミス1から3では「ICPS」(Interim Cryogenic Propulsion Stage:暫定極低温推進ステージ)、アルテミス4では「EUS」(Exploration Upper Stage:探査上段)に換装し、後続ミッションではさらにそれを進化させるプランを打ち立てた。
しかし、まさにこのプランがSLSのプログラムを複雑にし、遅延とコストを増大させる原因となった。そのためアイザックマン氏は今回の改編でEUSの開発を中止し、現行仕様のSLSを標準化し、継続運用することを決定。この変更をアイザックマン氏は、打ち上げごとに仕様が変わる「一点物の芸術品」から「量産可能な標準機」への転換とも表現している。
EUSの代替案は「セントールV」?
ただし、初期型の「ICPS」の搭載エンジン(RL-10)が1基であるのに対し、拡張型の「EUS」には同系統のエンジン(RL10C-3)が4基搭載される予定だった。つまりその推力差は約4倍。これではアルテミス1・2と同様に、後続ミッションにおいてもオリオン宇宙船をいったん地球の楕円軌道に乗せなければ月に送れない。また、その他の機材を搭載することもできず、打ち上げ頻度が増すことでコストも膨らむ。そのためNASAは、アルテミス4以降で使用するSLSを他の方法で推力アップすることを示唆。会見でその仕様機は「near Block 1」(ブロック1に近い仕様)と表現された。
この機材の詳細を今回NASAは明らかにしなかったが、一部のメディアでは第2段に「セントールV」を流用する案を有力視している。セントールVとは、ICPSと同じくボーイングの子会社であるULAが製造し、RL-10を2基搭載するユニットであり、ULAの新型ロケット「ヴァルカン」の第2段としてすでに運用実績もある。推力こそEUSの約半分だが、新たな実証期間が短くて済み、信頼性、コストにおいて優位性が高い。
今回の発表では再編の概要だけが提示されたが、3月下旬には「アルテミス・アーキテクチャ定義文書」が公開され、より詳細なミッション・プロファイルが共有される予定だ。「near Block 1」とその第2段に関して、場合によっては今回まったく触れられなかった月軌道ステーション「ゲートウェイ」の今後に関しても、その発表で明らかになる可能性がある。


