経営・戦略

2026.03.02 08:57

「深さ」で勝つ──中核能力に集中してスケールする戦略

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多くの人は、自分のリソースを広げすぎる危険性を知っている。ではなぜ、これほど多くのリーダーが、可能な限り多方面に事業を拡大しようとするのか。答えは単純だ。競争優位を獲得し、スケールに先んじるための正しい道に感じられることが多いからである。しかしデータは、手を広げすぎると組織がグローバルなインパクトを生み出すことが難しくなることを示している。

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なぜ「広げすぎ」はしばしば裏目に出るのか。理解するには、企業が失敗する理由の統計に目を向けるとよい。Gateway Commercial Financeによる調査結果によると、経営者の半数以上(54%)が、事業失敗の最大の理由としてキャッシュフローの問題を挙げている。過度な拡大は、組織の手元資金をあっという間に食いつぶしてしまうのだ。

例えば、チームが自社業界のあらゆる側面を、構築し、保有し、管理しようとしたときに何が起こるかを考えてみてほしい。従業員は中核的な責務に深く集中する力を失う。その結果、余力を使い果たし、帯域を限界まで引き伸ばされたメンバーが、機会を逃したりミスを犯したりする。責務に追いつけない状態は顧客対応上の問題へと連鎖し、評判と売上の低下、さらには離職率の上昇を招きかねない。

解決策は何か。私の経験では、いくつかの中核能力を磨き上げることにリソースを投じることだ。そうすれば、組織とその人材は真の専門性を築ける。

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どこから始めればよいか分からないなら、「広くではなく深く」という原則を、次の3つの領域で適用してみてほしい。

1. 事業の独自の強み

おそらくあなたは、独自の製品やサービスを市場に提供することでブランドを差別化してきたはずだ。近接領域の能力を付け足すのではなく、すでにうまくできている能力の水準を引き上げることを検討してほしい。

Appleは、いくつかの中核製品と中核能力で知られている。より広い電子機器の世界へ進出できるだろうか。おそらく可能だ。しかし同社は、中核能力を継続的に改善することで収益性の高いリーダーであり続けてきた。CascadeによるApple分析が指摘するように、Appleは消費者の未来志向のライフスタイルに合致する製品開発に、繰り返し注力している。同時に、顧客サポートの水準も引き上げ続けている。こうした「繰り返し磨き上げる」戦略が、数十年にわたりAppleを競合の先頭に保ってきた。

自社の独自要素をすべて洗い出すことを勧めたい。そのうえで今年は、新たな差別化要素をただ追加しようとするのではなく、既存の要素をさらに差別化すること(そしてその成果を発信すること)に投資できないか考えてほしい。

2. テクノロジーと関連インフラ

自社のテックスタックの健全性を常に評価すべきであることは言うまでもない。しかし、多数のテクノロジーを試すことは、チームの能力を制限し、データサイロや重複作業を生みかねない。より良いアプローチは、自社の業界向けに特別に設計された最新ソリューションで、テクノロジーのエコシステムを強化することに集中することだ。

例えば、ImpelはAIを活用したシステムを自動車ディーラー向けに提供している。同社の支援型でエージェント的なAI製品は従業員を支援し、既存インフラ(販売、ファイナンス、アフターサービスなど)の改善に集中できるようにする。業界特化ソフトウェアをテックスタックに加えることで、自動車関連の事業者はワークフローを磨き、自社のニーズに合わせて設計されたテクノロジーを軸にスケールしていける。

チームに、現在使用しているテクノロジーについて尋ねてみてほしい。そして、長期的なビジョンと戦略をより一貫性のある業界中心のアプローチで前進させられる、より優れたテック製品がないか確認してほしい。

3. 唯一無二の顧客体験

デジタル化は顧客サービスの競争環境を変え、均した。消費者(そしてこれはすべての消費者を意味する)は、リアルタイムのオンラインレビューやソーシャルメディアのメッセージが利用可能になる以前には持ち得なかった、影響力ある声をいま手にしている。顧客体験を確実に作り込み、実行を真に自社のものにできれば、事業をスケールアップし、ほかの要素を一切変えずに済む可能性すらある。

Khorosによる直近の調査統計では、65%の人が悪い顧客体験の後に離れ、43%の人が良い体験の後に再購入すると示されている。近い将来にスケールがチェックリストに入っているなら、後者のカテゴリーに入りたいのは言うまでもない。顧客サービスのあらゆる領域を改善することは、摩擦点を取り除き、ブランドの基準、約束、成果を高める助けになる。

顧客体験のアップグレードを検討する際は、従業員のスキルと士気に焦点を当ててほしい。満足度の高い従業員は、企業にとって最も目に見える、献身的なブランドアンバサダーとして、常により良いサービスを提供し、しばしばクラス最高水準の対応を実現するために、もう一歩踏み込んでくれる。

中核に隣接するように見える機会を断るには規律が要る。しかし最も効果的な企業は、拡大しすぎることがスケーリングを難しくし得ると理解している。

forbes.com 原文

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