イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は2月17日、中東に展開中の米海軍艦艇に対する直接的な脅迫を行い、空母を攻撃・撃沈する可能性をほのめかしていた。「米国人はイランに向けて軍艦を派遣したと喧伝している。たしかに軍艦は危険な軍事装備だ。だが、その軍艦よりも危険なのは、軍艦を海底に沈めることのできる兵器だ」とX(旧ツイッター)に投稿したのだ。
(編集部注:日本時間3月1日9時30分現在、アリ・ハメネイ師が死亡したという報道が出ている)
ハメネイ師が具体的にどんな兵器を想定してこの投稿を行ったのかは不明だが、イランは中国製の超音速ミサイル「CM-302」の購入契約締結が間近だとされている。不吉なことに、射程約290kmのCM-302は「低空高速飛行」により艦艇の防空網を回避できるよう開発されたと報じられている。
中国が開発した対艦攻撃兵器としては「空母キラー」と呼ばれる弾道ミサイル「DF(東風)-21D」と「DF-26B」があるが、いずれもイランの兵器庫にはない。そして、仮に東風シリーズの対艦ミサイルをイランが入手可能だったとしても、それらが「空母キラー」の名にふさわしい性能を発揮できるかという点に専門家は疑問を呈している。
攻撃耐性が高い空母
イランが現在保有する兵器では、米軍艦艇の撃沈は極めて困難であり、空母に至ってはほぼ不可能だ。なぜなら、軍艦は広範囲にわたる損傷にも耐えられるよう設計されているからだ。
実際、米海軍で戦闘中に撃沈された最後の空母はカサブランカ級護衛空母ビスマーク・シーで、それはちょうど81年前の2月の出来事だった。第2次世界大戦末期の硫黄島の戦いで、日本軍の特攻隊による攻撃を繰り返し受け、沈没したのである。
「現代の空母は当時の艦よりはるかに大型で、攻撃耐性も高い」と米ケンタッキー大学パターソン外交・国際通商大学院のロバート・ファーリー上級講師は指摘する。「CVN-78(米海軍最大の原子力空母ジェラルド・R・フォード)は排水量10万トン級で、第2次世界大戦時の最大空母の約1.5倍だ。他の条件が同じなら、大型艦は小型艦より生存性が高い」
中東に現在展開中のニミッツ級原子力空母エイブラハム・リンカーン(CVN-72)と、追加派遣された最新鋭の空母ジェラルド・R・フォードは、いずれも空からの攻撃に対抗する高度な武装を備えている。さらに重要なのは、これらの空母が各々、空母打撃群によって入念に護衛されている点である。
「米軍の超大型空母は、攻撃を受けても戦い続けられるよう設計されている」と、脅威インテリジェンス会社スカラブ・ライジングの社長で地政学アナリストのイリーナ・ツッカーマンは説明する。「その上で、米海軍は空母を多層の防御で囲む。イージス駆逐艦や巡洋艦、戦闘機による空中哨戒、電子戦、デコイ(おとり)、そして近接防空システムだ」



