もう1つ考慮すべきなのは、たとえ対艦ミサイルが空母打撃群の多重防御を突破できたとしても、それだけでは空母を沈めるには不十分かもしれないという事実だ。
「現代の兵器の多くは『軟目標』を想定して設計されている。つまり現代のミサイルは、空母ほど巨大な目標を破壊することを想定されてはいない」とケンタッキー大のファーリー博士は述べた。「現代の空母には高度な内部保護と区画分割システムが備わり、沈没しにくい構造になっている。要するに、(撃沈するには)非常に高いハードルがあるということだ」
沈まなかった空母アメリカ
この1週間、インターネット上では米海軍の退役空母を用いた生存性試験について言及する軍事評論家らが相次いだ。2005年4~5月に大西洋沖で行われた実艦撃沈演習(SINKEX)において、キティホーク級空母アメリカ(CV-66)は予想以上に高い耐久性を示した。同艦は約1カ月にわたる激しい実弾演習に耐え、最終的に内部に仕掛けた爆薬によって自沈処理された。
このとき空母アメリカは退役からほぼ10年が経過しており、艦体の状態は劣悪だったことを付記しておこう。また、艦を救援するダメージコントロール(被害管理)作業は一切行われなかった。
ファーリー博士はこの演習について、「現代の空母が甚大なダメージを受けても沈没しないことを証明した」と評する。「しかも空母アメリカは、空母の生存性において最も重要な要素、すなわち訓練された経験豊富な乗組員による大規模なリアルタイム・ダメージコントロールを受けられなかった」
沈めずとも「空母は無力化できる」
だがそれよりも、ハメネイ師が「イランの勝利」を演出する上で、実際に米空母を沈める必要などないかもしれない点に留意するべきである。
「馬蹄投げと手榴弾は、近いだけでも意味がある(Close only counts in horseshoes and hand grenades)」という、目標に直撃しなくても有効なことを指す古い英語の格言がある。空母への幸運な一撃は、米海軍そのものに壊滅的打撃を与えかねない。
1960年代、米空母3隻が壊滅的な火災事故を生き延びた。火炎弾(フレア)の不時発火が原因で起こった1966年10月の空母オリスカニー(CVA-34)の火災では、弾火薬庫の誘爆により艦体前半部が炎に包まれ、44人が死亡、156人が負傷した。
それから1年も経たない1967年7月、空母フォレスタル(CVA-59)でロケット弾の誤発射が原因の火災が発生。飛行甲板上で爆弾が次々に誘爆し、下甲板では燃料に引火した。連鎖的な爆発の結果、乗組員134人が死亡、161人が負傷した。
この事故を契機に新たな安全対策が導入され、それが1969年1月の原子力空母エンタープライズ(CVN-65)の火災事故対応に役立ったと可能性がある。ズーニー・ロケット弾の誤発射で飛行甲板が炎に包まれたこの火災では、乗組員28人が死亡、314人が負傷し、艦載機15機が破壊された。
火災後、各空母の修復には数億ドルが費やされた。


