経済・社会

2026.03.03 13:30

ステーブルコインの期待と危うさ:地経学研究所の一葉知秋

2026年は米国によるベネズエラへの武力行使、そして現職のマドゥロ大統領拘束という展開で幕を開けた。そのベネズエラの昨年のインフレ率は269.9%に達した(IMF推計)。2010年代のチャベス政権期から財政赤字を貨幣増発で穴埋めしてきた結果、ベネズエラでは20%超のインフレが常態化した。チャベスの後を継いだマドゥロ政権も安易な通貨供給を続け、2018年には年率6.5万%という途方もないハイパーインフレに陥った。自国通貨ボリバルの信認が崩れるなか、市民が頼るのがドル、そしてステーブルコインである。

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ステーブルコインとは、ドルなどの法定通貨と価値が連動するよう設計されたデジタル資産である。ビットコインなど暗号資産はボラティリティが極めて高く決済手段には適さない。そのため伝統的な銀行決済や、SWIFTを用いたクロスボーダー決済が困難なベネズエラのような国・地域でステーブルコインが普及しつつある。

2025年、ステーブルコインの取引総額は世界で35兆ドル(約5240兆円)に達したと推計されている。ドル建てステーブルコイン市場は、テザー社が発行するUSDT(約60%)とサークル社が発行するUSDC(約24%)の寡占状態である。

ステーブルコイン取引総額の過半を占めるのが、暗号資産取引所の間の決済である。暗号資産市場の急拡大に伴ってその取引量も増える構造にある。

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第2次トランプ政権は暗号資産やステーブルコインの流通拡大を積極的に後押しする一方、連邦準備制度理事会(FRB)による中央銀行デジタル通貨(CBDC)、つまりデジタル・ドルの発行を禁じた。2025年7月に連邦議会で成立したGENIUS法は、ステーブルコイン発行者に対する自己資本要件や連邦当局による監督について規定した。規律ある流通拡大への期待から取引は一気に膨らんでいる。しかし、ステーブルコインの普及は光だけでなく影も伴う。

まず重要なのは暗号資産、ステーブルコイン、CBDCを明確に区別することである。暗号資産は民間事業者が発行する「金融商品」であり、ステーブルコインは民間事業者が提供する「決済手段」である。一方、CBDCは各国の中央銀行が発行する「法定通貨」である。

CBDCとステーブルコインの最大の違いは決済のファイナリティ(完了性)にある。CBDCはFRBや欧州中央銀行(ECB)、日銀のような中央銀行が発行する現金をデジタル化した通貨であり、CBDC決済に対応した店舗やレストランでQRコード決済のように使われることが想定されている。

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