経済・社会

2026.03.03 13:30

ステーブルコインの期待と危うさ:地経学研究所の一葉知秋

一方で、ステーブルコインは発行主体が民間事業者なので、その破綻によりコイン残高が消え去ってしまうリスクがある。銀行預金であれば取り付け騒ぎが起きても中央銀行による預金者保護が期待できる。2023年にシリコンバレーバンク(SVB)が破綻した際にはFRBが預金を全額、保護した。

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しかしステーブルコインには、そのような預金者保護も中央銀行の監査も追いついていないのが実態だ。米国ではGENIUS法に基づき発行残高100%以上の裏付け資産確保が義務付けられており、各社はドルの現金や短期米国債を引き当てている。とはいえUSDCを発行するサークル社は裏付け資産の一部をSVBに預けていたため、SVBが破綻した際にドルペッグ(1ステーブルコイン=1ドルという連動関係)を喪失し1USDCが0.8ドル付近まで急落したことがある。

さらに、ステーブルコイン業界1位のテザー社は2014年に香港で設立された後、拠点を英領バージン諸島、エルサルバドルへと移しており、GENIUS法の規制が及びにくい。社員は世界中からリモートで勤務しており実態もはっきりしない。

このようにテック・リバタリアニズムを体現するテザー社のUSDTは、通貨危機にあえぐベネズエラ市民にとって救いの糸となってきた。しかし同時に、ロシアや北朝鮮が金融制裁を回避するためUSDTを用いている実態も明らかになっている。対北朝鮮制裁をめぐり昨年10月に多国間制裁監視チーム(MSMT)が公表した報告書は、北朝鮮の兵器調達や、サイバー部隊が取引所から盗んだ暗号資産の現金化にUSDTが使われたと指摘している。米日の財政当局も、こうした動向に目を光らせている。

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相良祥之◎地経学研究所主任研究員。研究分野は国際政治経済、経済安全保障。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学公共政策大学院修了。国連、外務省、DeNAなどを経て現職。国連ではニューヨーク本部、スーダンで勤務しアフガニスタンでも短期勤務。田所昌幸・相良祥之『国際政治経済学[第2版]』(名古屋大学出版会、2024年、共著)など著書。

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