不正利用の深刻化に対処するため、自社でインフラを構築して再始動
創業当初、サントスとグティエレスはわずか9人の従業員でバンキング・アズ・ア・サービス(BaaS)事業者を活用してアプリを立ち上げ、運営していた。しかし、6カ月が過ぎると、事業は成長する一方で、不正利用が深刻な問題になり始めた。そこで2023年、2人は銀行パートナーをCommunity Federal Savings Bankに切り替え、自社でより多くのインフラを構築してプロダクトを再始動させた。
提携先銀行と契約して新サービスを開始、約31億円を資金調達
2025年、Comúnは2行目の提携先銀行としてCross River Bankと契約し、「Pay」と呼ぶ新サービスを開始した。これはComúnのデビットカード同士であれば、手数料無料で個人間送金ができる仕組みだ(Común以外の米国のデビットカード間で送金する場合は、送金額の1.75%の手数料がかかる)。このサービスは、銀行系送金サービスZelleが単独アプリの提供を終了したことを受けて開始された。Zelleは本来、各銀行のアプリに組み込まれて利用される仕組みだが、Zelleを導入していない銀行の顧客向けに単独アプリも提供していた。そのアプリが廃止されたことで、送金手段を失った利用者の受け皿となることを狙った。
サントスによると現在、Comúnの収益の40%は、デビットカードのインターチェンジ手数料(加盟店がカード決済を受け入れる際に支払う手数料)で、最も重要な収益源である国際送金が35~40%、残りが各種銀行手数料や顧客預金に対する利息収入となっている。
Comúnの提携先のCommunity FederalとCross Riverはいずれも、同社が契約を結ぶ以前に当局からの是正措置を受けていた。しかし、サントスは、そうした規制強化を経たことを前向きに捉え、「提携銀行が正しい方向に進んでいるという確信を持てる」と語る。2023年の再始動にあわせて、Comúnはより強固な本人確認(KYC)システムを導入した。その後も、取引のリアルタイム不正監視や、口座開設時の書類確認の強化を進めている。
2025年10月、Comúnは評価額2億ドル(約314億円)で1950万ドル(約31億円)を調達し、累計調達額は4950万ドル(約78億円)に達した。同社の投資家にはコスタノアに加えて、レッドポイント・ベンチャーズやサウス・パーク・コモンズ、FJラボ、アニモ・ベンチャーズ、RTPグローバルが名を連ねている。
政治的立場を取ることなく、顧客層のために一貫した声を上げ続ける
次の一手としてComúnは現在、融資商品の開発と、ユーザーが中南米の家族に資金を送る手段としてステーブルコインを提供する構想に取り組んでいる。政治リスクについて問われると、サントスは慎重な姿勢を崩さない。「結論として言えるのは、このコミュニティはもともと周縁的な存在であり、世論の変化によって周縁化される可能性があるということだ。我々は政治的立場を取ることなく、この顧客層のために一貫した声を上げ続ける方法を模索してきた」。
一方で、コットン上院議員が「法的地位を持たない移民に銀行口座を認めるべきではない」と主張している点について具体的な見解を求められると、サントスはこう反論した。すべての移民が規制された金融サービスにアクセスできるようにすれば、その金融活動は銀行秘密法(Bank Secrecy Act)のもとで監視対象となる。同法は、不審な取引や1万ドル(約157万円)を超える現金取引の報告を義務付けている。
「経済活動を規制された金融システムの外にある現金経済に追いやっても、それが消えるわけではない。ただ監視が難しくなるだけだ」と彼は付け加えた。


