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2026.03.03 16:00

トランプ政権の逆風下で成長、移民向け金融を開拓する「Común」──【Fintech 50】2026年版

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スモールビジネスを営む人々向けのソフトウエア

2017年サントスは、メキシコの食品大手シグマ・アリメントスで10億ドル(約1570億円)規模の事業部門を率いていた。国際業務の一環で米国各地のボデガ(小規模商店)を訪れた際、サントスはいまだに在庫や売上を紙とペンで管理している店が多いことに衝撃を受けたという。彼はそこに、ヒスパニック系移民、とりわけスモールビジネスを営む人々向けのソフトウエアを開発する余地があると感じた。

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2019年、サントスは起業のアイデアを具体化するため、学生ビザで渡米し、マサチューセッツ工科大学(MIT)でMBA取得を目指した。パンデミックでオンラインバンキングへの関心が高まる中、彼は事業の方向性を見直し、家族への送金ニーズに応える個人向けデジタル金融サービスに注力することにした。

2021年の卒業を目前に控えた頃、友人を通じてアビエル・グティエレス(30)と出会った。グティエレスはメキシコのモンテレイ出身で、スタンフォード大学でコンピュータサイエンスを学ぶために渡米していた。グティエレスは、法人向けクレジットカードのフィンテック企業Brexで3年間働いた後、自身のスタートアップ立ち上げのために退職したばかりだった。

社会保障番号を持たないヒスパニック系移民を対象に、デジタル当座預金口座を提供

約4カ月にわたる議論を経て、サントスとグティエレスは、提供する製品とターゲット顧客を明確に定めた。それは、米国の社会保障番号を持たないためにオンラインで銀行口座を開設できず、母国の家族に現金を送るたびに法外な手数料を支払っているヒスパニック系移民を対象にした、無料のデジタル当座預金口座だ(こうした送金は「レミッタンス」とも呼ばれ、多くの低所得国の経済を支える重要な資金源となっている)。連邦準備制度理事会(FRB)の最新調査によれば、米国在住のヒスパニック系住民の12%が銀行口座を持たない「アンバンクト」層で、その割合は全米平均の2倍にのぼる。

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Comúnは他のフィンテック企業と同様、自ら銀行免許を持つのではなく、提携銀行と連携してサービスを提供する。これにより利用者は数万台規模のATMネットワークにアクセスできる。現金で給与を受け取る人でも、オンライン口座に入金し、必要に応じてデビットカードで引き出すことが可能になる。

約7億1000万円のシード資金の調達後、Comúnのアプリを正式公開

2022年9月、創業者2人はコスタノア・ベンチャーズの主導で450万ドル(約7億1000万円)のシード資金を調達した後、Comúnのアプリを正式に公開した。コスタノアのゼネラルパートナー、マーク・セルコウは、彼らが「市場の隙間を的確に捉え、複数世代にまたがるニーズに応える設計をしている点に魅力を感じた」と語る。「もし米国の一般層向けにChimeのようなサービスを作るだけなら、海外送金は中心機能にはならないだろう。しかしComúnの顧客にとっては、それが極めて重要なのだ」とセルコウは指摘する。

共和党が打ち出した政策が、結果的にComúnの優位性を拡大

国連の国際農業開発基金(IFAD)が立ち上げたプラットフォーム「RemitSCOPE」によれば、2021年に米国在住者が中南米およびカリブ諸国へ送金した金額は1015億ドル(約15.9兆円)を超えた。皮肉なことに、共和党がすでに打ち出したある政策は、結果的にComúnに追い風となっている。トランプ大統領が7月に署名した「ワン・ビッグ・ビューティフル法」は、国外送金に1%の課税を課す内容を含んでいる。ただし、この税は銀行口座やデビットカードからの送金には適用されない。そのため、店舗型の現金送金業者と比べたComúnのコスト面での優位性は、むしろ拡大している。

17カ国向けの送金手数料は、他社と比べても低水準

Comúnの国際送金の平均額は235ドル(約4万円)だ。17カ国向けの送金手数料は1回あたり2.99ドル(約469円)で、為替レートにわずかなスプレッドが上乗せされる。米ドルを法定通貨として採用しているパナマやエルサルバドルへの送金の場合、海外の銀行口座宛てなら2.99ドル(約469円)に加えて1%、受取人が現金で受け取る場合は1.5%が加算される。例えば、パナマの銀行口座に200ドル(約3万円)を送金する場合の手数料は4.99ドル(約783円)、率にして2.5%となる。これは、店舗型送金業者で8ドル(約1256円)以上、フィンテックのRemitlyでかかる7.59ドル(約1192円)と比べても低水準だ。

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翻訳=上田裕資

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