すべての絵を分析した結果、大人の作品と子どもの作品のフラクタルパターンには明確な差が見られた。テイラーは『Frontiers』にこう語っている。「本研究は、ジャクソン・ポロックによって有名になった注ぐ技法を用いた場合、子どもが生み出す芸術的パターンが、大人が生み出すものと区別できることを示している。注目すべきことに、子どもの絵のほうが、大人の絵よりもポロック作品に近いことが示唆された」
ジャクソン・ポロック作品を生み出すバイオメカニクス(生体力学)
こうした違いの説明として考えられるのが、大人と子どもの身体の動かし方の違いだ。幼い子どもは、大人と同じバイオメカニクス上のバランスをまだ獲得していない。発達途上にあり、大人よりもしばしばバランスを崩しやすい。ポロックのスタイルは大量の身体動作を要するため、研究者はこれが大人と子どもの作品の差につながり得るとみている。では、それはポロックについて何を示唆するのだろうか。
テイラーは以前、ポロック研究者のフランシス・オコナーが「ポロックの出生外傷(母親のへその緒で首が絞められた)と、それに伴う手先の巧緻性の喪失という症状が、彼の芸術を決定づけた」と述べたことを記録している。裏づけとなる医学的記録はないものの、ポロックがバランス感覚の発達が十分でなかった可能性を説明し得るという。
テイラーはこうも述べる。「クロード・モネの白内障、フィンセント・ファン・ゴッホの心理的な課題、ウィレム・デ・クーニングのアルツハイマー病と並び、ポロックの限られたバイオメカニクス上のバランスをめぐる美術史上の議論は、日常生活のある側面で困難をもたらす状態が、芸術における壮大な達成につながり得ることを思い起こさせる」
ジャクソン・ポロックの独自のアートスタイルは、ほかにもさまざまな研究の対象となってきた。たとえばメキシコの研究者は2019年、流体力学を用いてポロックのドリップスタイルを再現している。


