ウクライナ侵攻に伴う損失の規模
この戦争は大きな犠牲を伴っている。米CNNによれば、ウクライナの人口の4分の1が今も避難生活を続けている。ロシア軍の無人機とミサイル攻撃により、ウクライナでは数千人の民間人が死亡し、少なくとも6つの都市が破壊された。さらに、3万5000人以上のウクライナの子どもたちがロシアへ強制移送されている。世界経済フォーラムの専門家は、ウクライナの復興には1兆ドル(約155兆円)以上の費用がかかると見積もっている。
一方、ロシア軍は2022年2月の全面侵攻開始以降、120万人以上の死傷者を出している。同軍では数十億ドル相当の防衛装備品と車両が破壊され、侵攻前の戦車部隊の3分の2が壊滅し、黒海に展開していた海軍艦隊のほぼ半数が損傷または破壊された。さらに、ロシアは西側の制裁により数千億ドルの損失を被っており、欧米諸国にはロシアの国有資産約3000億ドル(約46兆円)が凍結されている。この壊滅的な被害にもかかわらず、ロシア政府はウクライナでの戦争を継続している。
元駐ウクライナ米大使で、米シンクタンク大西洋評議会ユーラシアセンターのジョン・E・ハープスト専務理事は筆者の取材に対し、次のように述べた。「プーチン大統領がウクライナの実効支配を望んでいることは明らかだ。つまり、同大統領は両軍の現時点の接触線での停戦を望んでいない。プーチン大統領は可能な限り多くの領土を獲得し、ウクライナに新たな政府を樹立したいと考えている。同大統領が交渉でこれを手に入れることは不可能だろう」
両国のこうした損失を踏まえ、交渉プロセスに変化が見られない状況では、国際社会は和平の実現に向けた取り組みのあり方を考え直す必要があるかもしれない。現在のやり方ではウクライナ侵攻の終結には至っていないからだ。では、米国、欧州連合(EU)、NATOをはじめとする国や国際機関は、ロシアの侵略を止めるために何をすべきだろうか?
ウクライナに平和をもたらすには
ハープスト専務理事の答えはこうだ。「プーチン大統領に戦闘を止めるよう説得するには、3つの条件が必要だ。まず、ロシアに対する大規模な経済制裁だ。やるべきことはまだ山ほどあり、時間をかけて実行していく必要がある。そうすればプーチン大統領は、事態がさらに悪化するだけだと理解するだろう」


