富の創出でテスラからスペースXに比重が移ってきている状況を観察している投資家にとって、問いは理論的なものというより構造的なものになっている。起業家の富の源泉として、現代で最も重要なもののひとつの中核に位置する非公開企業に、どうすればエクスポージャー(持ち分)を得られるのかという問いだ。
現状、そのアクセスはおおむね、制限のある手段を通じたものになっている。たとえば、スペースXの非公開株を保有する上場投資信託(ETF)やミューチュアルファンド(投資信託)、インターバルファンド(一定の間隔でしか解約できない投資信託)や、適格投資家だけが参加できるセカンダリー市場(流通市場)での取引などだ。
インフラと複利的拡大
マスクが史上初めて資産額1兆ドル(約155兆円)以上の「トリリオネア」になるかどうかという議論は、突き詰めればひとつの力学に帰着する。
現在、マスクの資産のおよそ3分の2は軌道上インフラやグローバル通信ネットワーク、これらと関連する非公開ベンチャーに結びついている。打ち上げ能力は衛星展開を支え、衛星展開はブロードバンドの規模を支え、ブロードバンドの規模は継続的な収益と各国の主権インフラへの統合を支える。さらに今後、AIの取り組みもこれらのネットワークと交差していく可能性がある。
歴史的に見ると、インフラ支配のあとに富の拡大の加速が続いてきた。たとえば鉄道の場合、線路が敷設された時点で富の拡大が止まったわけではない。石油パイプラインも、流通網が確保されると富が制限されたわけではない。あるいは送電網も、電力が流れ始めた時点で富が頭打ちになったのではない。規模の確立は、ストーリーの終わりではなく複利的な拡大の始まりだった。
ロックフェラーの富が最大になったのも事業拡大期ではなかった。それは、支配権を確立し、そのシステムが複利効果を生み始めたあとのことだった。
54歳のマスクは経済的な成長曲線の終点に立っているのではない。彼はいま、グローバルに展開するインフラ・プラットフォームを強固にしている段階にある。
軌道への打ち上げシステムと衛星ネットワークは、21世紀型商業の基盤レイヤーとしての地位を固めつつある。インフラが不可欠なものになったときに、その上に築かれる富も相応に拡大していくことになる。
マスクの現在の資産は、頂上のようには見えない。
それで言えば、むしろ「ベースキャンプ」のように見える。


