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2026.02.26 08:30

「安売りしない」宣言 日本原料の模倣困難な浄水ビジネス戦略

齋藤安弘|日本原料

齋藤安弘|日本原料

Forbes JAPAN 2026年4月号』では、規模は小さくても高い付加価値を誇る中小企業を表彰する「スモール・ジャイアンツ」を特集。激動の時代に、大胆に自らを変化させ、地域から世界に飛躍する「小さな巨人」を発掘するプロジェクトは9回目を迎えた。グランプリに選ばれたのは「卵の総合ソリューション企業」ナベル(京都市)だ。部門賞を含めスモール・ジャイアンツに選ばれた7社は、日本のモノづくりを独自のブランドに昇華させた。それらは単なる製造業を超えた「文化の製造業」や「感性の製造業」と言っても過言ではない。ファイナリストたちの新・成長モデルに迫る。

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国内シェア8割以上を誇る「ろ過砂」で、日本の水道を支えてきた日本原料。いかにして「下請け」から脱却し、世界の水問題を解決に導くプレイヤーに生まれ変わったのか。


茨城県高萩市にある高萩工場は、日本原料の最大の拠点だ。敷地内に足を踏み入れると、大量の砂がうずたかく積まれている。山の頂上は高さ10mはあるだろうか。「今は繁忙期なので少なくなっていますが、通常はこの1.5倍くらいの高さに積み上がります」。砂の山を見上げる社長の齋藤安弘はどこか誇らしげだ。この砂が今、国を越えて人々の暮らしや産業を支える「命の水」をつくり出している。まさに日本原料の稼ぐ力の源だ。

敷き詰めた砂の層に汚れた水を浸透させると、不純物が砂粒の表面にくっついたり、砂粒同士の隙間でこされたりして、きれいな水が得られる。メソポタミアやインダスなど古代文明のころから使われていたろ過技術だが、水道水は今もなお、同じ原理でろ過されている。日本原料は、この「ろ過砂」を国内浄水場の8割以上に納めているパイオニアだ。

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世の中にいくらでもあるように見える「砂」が、高い付加価値を生む理由。それは、砂が日本原料の技術によって代替できない製品に生まれ変わるからだ。水は人の命と産業に必要不可欠なうえ、それを生み出す製品が模倣困難であれば、顧客は永続的なパートナーとなる。これによって、顧客生涯価値(LTV=ライフタイムバリュー)は最大化していく。

いったいどういうことなのか。この謎を解くためには、日本原料の歴史を少し紐解く必要がある。

マイナスからのスタート

1939年に創業した日本原料は、もとはガラスの原材料となる砂を製造・販売していた。第二次世界大戦後、砂粒を精緻にふるい分ける技術がGHQの目に留まり、日本の水道事業再興への協力を要請され、「ろ過砂屋」として再出発した。

時代は高度経済成長期。日本各地に浄水場がつくられると、ろ過砂の需要は一気に拡大した。だが、砂とは言え掘り続ければ枯渇する。60年代には、主要な産地だった一級河川からの採取が規制された。そこで、創業者であった齋藤の祖父・廣次が始めたのが砂のリサイクルだ。ろ過砂は5年ほどで汚れがたまり機能が低下するため、定期的に新しい砂と交換する必要がある。それまで産業廃棄物として処分されていた汚れた砂を、洗浄して再利用する「更生(リサイクル)工事」が新たな事業の柱となった。

齋藤が後継ぎとして日本原料に入社したのは、さらに時代を下った89年。しかしそのころには、高度経済成長期の会社の勢いは影を潜めていた。

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文=中居広起 写真=アーウィン・ウォン

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