それらの作品のなかで、2016年の時点で最も高額と査定された作品には、ポール・セザンヌの「Le Château Noir(シャトー・ノワール/黒い城)」(評価額は5000万ドル)、ピート・モンドリアンの「Composition C with Grey and Red(灰・赤のコンポジションC)」(同4000万ドル)、コンスタンティン・ブランクーシの彫刻「La Muse(眠れるミューズ)」(同4000万ドル)、クロード・モネの「Nympheas(睡蓮)」(同4500万ドル)などがある。
ブラックはこれらを担保にして、2016年の時点で5億ドル以上の融資を受けていた。ブラック個人の財務状況を明らかにした資料(2015年12月31日付で作成されたブラック家のバランスシート)を見ると、彼が管理する団体の負債総額は6億3100万ドル。そのうち5億6500万ドルは、「Narrows(ナローズ)」という事業体による借り入れだった。
2016年7月と2017年3月にまとめられた別の資料によれば、Narrowsはブラックが担保に入れたアート作品の所有者だ。タイトルを「All Art(全アート作品)」として作成されたこれらの資料は、それぞれの時点でブラックが所有していたすべての作品のリストだとみられる。
そこには、各作品の取得価格と競売会社クリスティーズが示した査定額、未実現損益が記載されている。それによると、2016年時点のブラックのアートコレクションの評価額は、総額30億ドル、未実現利益(含み益)は10億ドルだった。
それから10年後の現在、そのコレクションの価値がさらに上昇していることは間違いない。ニューヨークを拠点に活動する美術品鑑定士のシルヴィア・レナードウルフは、2017年の「All Art」に記載された作品の価値は、およそ50%上昇していると推定する。同じくニューヨークを拠点とする別の鑑定士、ボニー・キーガンは、「こうした一流の作品は、価値を失いません」と語る。
「並ぶものがない最高傑作です。最高級の作品を集めるコレクターの誰もが欲しがるものです」
ブラックが現在、所有する作品を担保にどれだけの融資を受けているのか、またこの10年の間にいずれかの作品を売却しているのか、詳細は明らかになっていない。ブラックの広報担当者は、コメントを差し控えている。
数十億ドルの価値があるこのポートフォリオを担保にした借り入れによって、ブラックは巨額の資金を手にすることができた。そして同時に、内国歳入庁(IRS)へのキャピタルゲイン税の納付を回避することができた(ビリオネアや超富裕層がよく使う「買って、借りて、死ぬ」戦略だ)。


