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2026.02.20 11:30

巨額投資が続くのに、AIコンピュート価格がいまだ不透明な理由

Andrii Yalanskyi / 500px /Getty Images

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AIインフラブームには数千億ドル(数十兆円)規模の資本が流れ込んでいる。だが市場には、他の主要コモディティ(商品)が何十年も前に整備した「透明な価格ベンチマーク」がいまだにない。企業がGPUやデータセンターに記録的な資金を投じる一方で、取引の大半は条件が見えにくいカスタムの二者間契約として結ばれている。その結果、同等のハードウェアでも価格が大きくばらつき、リスクがバランスシート上に静かに積み上がり、何かが壊れるまで表面化しない市場になっている。

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精度とデータを土台にした産業にとって、皮肉は際立つ。企業は自社のGPU(画像処理を担う半導体)が何テラフロップス(計算速度の単位)の性能を発揮するかは正確に語れるのに、それに対して適正な価格を払っているかどうかは分からないことが多い。AI革命を支えるインフラ──複雑な問題に明確さをもたらすはずの技術そのもの──が、価格の不確実性という土台の上に築かれているのだ。そして、その不確実性がひび割れとして現れ始めている。

目隠しで走る市場

「物理的な計算資源の調達は現在、不透明な市場で行われています」と語るのは、AIコンピュート(AI計算資源)の金融インフラを構築する企業Ornn AI(オーン・エーアイ)のCTO(最高技術責任者)、ウェイン・ネルムズだ。「各取引の価格は公表されません。その結果、各社は同様の計算資源に対してそれぞれ異なる価格を支払うことになり得るのです」。

その数字は驚くべきものだ。ネルムズによれば、GPU取引の大半は非公開の相対交渉で成立する。計算資源の調達価格が公に知られるオープン市場での取引は、全体のわずか1〜5%にすぎない。

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価格の実態もそれを如実に示している。同じH100チップ(NVIDIAが製造する高性能AI向けGPU)でも、ある企業は1時間あたり1.50ドル(約232円)で借りる一方、別の企業は3ドル(約464円)を支払う。本質的に同じ計算能力に対して2倍の価格差だ。立地やネットワーク品質による差もある。しかし、その多くは単純に、誰も他社が何を払っているかを知らないことが原因にすぎない。

石油や天然ガスなど重要な資源では、透明性を高めるよう価格情報が共有された

重要な資源の市場が通常あるべき姿とはかけ離れている。石油の場合、世界経済に不可欠になると、Platts(プラッツ)、Argus(アーガス)、ICIS(アイシス)といった価格報告機関(市場価格を調査・公表する民間機関)が日次のベンチマークを公表するようになった。天然ガスのパイプライン建設に資金調達が必要になったとき、貸し手に安心感を与えるためにHenry Hub(ヘンリー・ハブ)という指標が生まれた。銅、小麦、大豆──主要なコモディティはことごとく、最終的に透明な価格設定を確立してきた。不透明なままでは資金調達も計画もほぼ不可能になるからだ。

AIコンピュートはすでに同等の規模に達している。しかし価格付けは、今や経済の根幹的な投入要素となったにもかかわらず、ニッチなハードウェア品目のような扱いのままだ。

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翻訳=酒匂寛

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