このSEミート宮崎がカタール向けの認定を受けたことで、宮崎として初めて県外の認定工業を経由せず、県内で処理した牛肉をそのままイスラム圏に出荷できる第一歩を踏み出した。
これは、単なる物流の短縮ではない。産地として、どこで処理され、どの基準で認められた肉なのかを、自らの言葉で市場に説明できる立場を得たことを意味している。
昨年1月29日には、ハラル認証の基準に従って処理された宮崎牛が、初めてカタールに出荷された。出荷されたのは、A5ランクの宮崎和牛11ケース、約150キログラム。牛肉はカタールに到着後、現地のレストランで提供された。今後、SEミート宮崎はイスラム圏を中心に年間最大1万2000頭規模の輸出を見込んでいる。
地方産業は、すでに「世界前提」で動き始めている
そもそも宮崎牛は、全国でも屈指の厳格な定義を持つブランド和牛だ。
その品質は、国内でも長年にわたり評価されてきた。5年に一度開催され、「和牛のオリンピック」とも呼ばれる全国和牛能力共進会において、宮崎牛は4大会連続で最高位となる内閣総理大臣賞を受賞。直近の大会では、「おいしさ」に関係するとされる脂肪の質を評価する部門で同賞を獲得している。
会場では、実際に宮崎牛を扱う立場にあるシェフやバイヤーから、評価の声が相次いだ。すでにドバイで和牛料理を提供しているという現地のシェフは、次のように語る。
「これまでさまざまな和牛を使ってきましたが、今回の宮崎牛は舌ざわりが非常に良かった。より高品質な和牛を探していたので、今後の活用を前向きに検討したい」
別の参加者からは、味わいと汎用性の両面を評価する声も聞かれた。
「脂が甘すぎず、固すぎず、口の中でとろけるバランスが非常に良い。ドバイでは牛肉を細切りや薄切りにしてサンドイッチの具に使うことも多いですが、その調理法にも十分対応できる。現地のさまざまな料理に応用できる食材だと感じました」
こうした反応を受けて、日隈副知事は、海外展開の先にある狙いをこう語る。
「海外市場での評価が高まれば、宮崎牛全体の価値も上がる。価値が正当に評価されれば、子牛価格や枝肉価格にも反映され、最終的には畜産農家の経営安定につながります」
その言葉から浮かび上がるのは、海外展開を “挑戦” や “夢” として語る姿勢ではない。
国内市場が縮小していく現実を直視したうえで、産地としてどこで価値を決め直すのか。その冷静な判断の延長線上に、一国ずつ市場を切り拓くという戦略がある。
和牛は、特別な存在なのか。それとも、日本の一次産業が向かおうとしている未来を先取りした事例なのか。国内需要が縮む社会において、次に同じ選択を迫られるのは、農業か、漁業か、あるいは職人技を抱える別の産業かもしれない。
少なくとも宮崎の現場では、地方産業が「世界を前提に設計される」時代への移行が、すでに静かに、しかし確実に始まっている。


