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2026.02.17 16:30

人型ロボ向けの「目」で米国大手RealSenseと競う、中国企業Orbbec

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世界中で開発競争が加速するAI搭載の二足歩行ロボット(ヒューマノイド)。自動運転車にとってのLiDAR(ライダー)と同様、自律的に動くロボットにとって不可欠な要素が、空間を立体的に把握する「3Dビジョンセンサー」(3Dカメラ)だ。

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この分野では現在、中国・深センのテック企業、Orbbec(オルベック。奥比中光)が急速に存在感を高めている。創業者の中国人エンジニア、ハワード・フアン(46)は、かつて米インテルの一部門だった強力なライバル「RealSense」と競り合いながら、2013年設立のOrbbecを世界トップシェアを狙える企業へと約13年かけて押し上げた。同社は、サービスロボットや産業用ロボットの「目」として採用を広げ、急成長を遂げている。創業者フアンは、この成功によりビリオネアの仲間入りを果たした。AI時代、また二足歩行ロボット時代の陰の立役者として覇権を狙う、中国テック企業をレポートする。

北京開催のロボット大会が示唆する、「3Dビジョンセンサー」の重要性とOrbbecの技術

2025年8月に北京で開催された「世界ヒューマノイドロボット大会」には、16カ国から約500体の二足歩行ロボット(ヒューマノイド)が参加した。主催者は「史上初の大会」と位置づけ、陸上競技やサッカー、ダンス、武術など26種目で競技が行われた。3日間にわたるこの大会で存在感を示したのが、中国政府の支援を受ける研究機関X-Humanoid(Xヒューマノイド)だ。同研究機関は計10個のメダルを獲得し、そのうち2個は金メダルだった。同機関が開発した身長1.8メートルの人型ロボ「Tien Kung Ultra」は100メートル走で優勝し、車輪型の「Tian Yi」は工場作業を模した資材搬送競技で1位に輝いた。

これらロボットの活躍を支えたのが、重要な中核技術である「目」だ。深センに本拠を置くOrbbecという、一般にはあまり注目されていない企業が、その高度な3Dビジョンセンサーを開発した。周囲を平面的に捉える2Dカメラなどと異なるこの技術により、ロボットは人間と同じように奥行きを認識できるようになり、複雑な環境の中を移動し、周囲と相互作用することが可能になる。Orbbecの会長兼CEOであるハワード・フアンは、高い目標を掲げている。彼はビデオインタビューで「我々は、人間の視覚能力を超える視覚をロボットに与えたい」と語った。

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顔認証から自動運転まで、奥行きを認識するセンサー技術の展開

フアンが2013年に設立したOrbbecは、当初は3Dスキャンや生体認証向けのビジョンセンサーを製造していた。同社の強みは、カラー情報と奥行き情報を同時に取得できる3Dビジョンセンサー(3Dカメラ)で、顔のスキャンや物体認識といった近距離から中距離の用途に使われている。また、より長距離のナビゲーションなどに用いられるLiDARセンサーも手がけている。これら2種類のセンサーは、単独あるいは組み合わせて、産業用ロボット、自律走行型モバイルロボット(AMR)、ロボットアーム、自動運転車、ドローン、そして近年ではAI搭載二足歩行ロボットにまで幅広く組み込まれている。

世界的なロボット市場の急成長と、中国企業の躍進を支える政府支援と中国市場という環境

「世界最高のロボットの目を作る」というフアンの野心は、急拡大する世界のロボット市場の追い風を受けている。調査会社Research and Marketsが6月に発表したレポートによると、世界のロボット市場の規模は、2024年の530億ドル(約8.1兆円。1ドル=153円換算)から、年平均成長率14%で拡大し、2033年には1790億ドル(約27.4兆円)に達する見通しだ。ダブリン本拠のResearch and Marketsは、AIの急速な進化や産業オートメーション需要の高まりを成長の主な要因として挙げている。

2025年6月に発表されたモルガン・スタンレーのレポートによると、世界最大のロボット市場である中国は、政府の支援を背景にグローバルの需要拡大をけん引している。同行は、中国のロボット部品市場も同様のペースで拡大すると述べており、とりわけ3Dビジョンや各種のセンサー分野が最も速く成長すると予測している。上海市場に上場するOrbbecは、すでにその恩恵を受けている。同社は、売上の90%を中国国内市場に依存し、残りを韓国やシンガポール、日本、米国などで上げている。

前年赤字からV字回復、創業者フアンは資産2400億円超のビリオネアに

Orbbecの2025年1〜9月期の売上高は前年の2倍以上の7億1400万元(約157億円。1元=22円換算)に拡大し、純利益は6900万元(約15億2000万円)に膨らんだ。これは、前年同期の純損失1億200万元(約22億円)からの大幅な回復となった。同社は同期間の売上内訳を公表していないが、2025年上半期の売上のほぼ3分の2は、生体認証向けセンサー(主に顔認識)、3Dプリンター、ゲーム用VRなど消費者向け用途のスキャナーが占め、ロボット向けセンサーは約3分の1だった。

Orbbecの累計出荷台数は、2025年12月末時点で500万個を突破した。こうした成長を背景に、同社株は過去12カ月で2倍以上に上昇した。27%の株式を保有するフアンは、2025年初めてビリオネアとなり、1月中旬時点の純資産は16億ドル(約2448億円)となった。

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翻訳=上田裕資

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