筆者は某EC大手企業のEU支社でEU Jewelry / Watches事業のCategory Leader(統括事業部長)を務めており、2025年5月からパリに在住しています。
日本では2月8日、第51回衆院選の投開票が行われましたが、遠くフランスの地で、筆者は日本の選挙制度が抱える「物理的・構造的な限界」を目の当たりにしました。
1票が「物理的に」間に合わない? 在外選挙による投票用紙は「大使館職員がハンドキャリー・飛行機で運ぶ」
今回の「超短期決戦」は、パリの日本人コミュニティにも異例の熱気をもたらしました。在仏大使館の職員も「在外投票者の、これほどの行列はついぞ見たことがない」と驚くほどでしたが、その裏で多くの在外邦人が「1票」を断念しています。筆者自身もその一人でした。
仕事の合間を縫って1月中旬に「在外選挙人証」を申請し、手元に届いたのは2月3日。翌日、在外選挙人証・パスポート・希望、を握りしめて大使館へ向かった筆者を待っていたのは、衝撃の事実でした。 「フランスでの受付は2月1日で終了しました」
日本の投票日より1週間も早い締め切り。その理由は、驚くほどアナログなものでした。 **「投票用紙は、大使館職員が『外交郵袋』に入れ、飛行機で直接日本までハンドキャリーで運ぶから」**そして、当該職員はすでに出発したから、というのです。日本持ち込み後は速達郵便で各自治体へ配送しているようです。
現代社会において、デジタルでも国際郵便でもなく、人間が物理的に海を渡らなければ票が届かない。この「丁寧すぎる」厳格さの陰で、多くの意思がこぼれ落ちています。「途中で紛失・強奪・すり替え等のトラブルになったら、投じた票はどうなるのだろう」、「諸々の人的・輸送費等のコストも納税者の負担(公費)から賄われるのかな」、などの現行制度に対する疑問や驚きを感じたところです。
その他の選択肢として郵便投票がありますが、在外選挙人証取得後、さらに郵便での投票用紙の請求(自費)、選管から郵便投票用紙の発送(公費)、郵便投票用紙の返送(自費)と、1往復半の国際郵送コストと時間が壁となり、実際に、毎回50%前後が期日に間に合わず無効となっています。



