習のもとで中国は、既存のルールに従う立場から、ルールを書き換える立場へと移行した。中国共産党は軍の近代化、産業支配、エネルギーの自立をはじめ、考え得るあらゆる分野にわたる包括的戦略を実行している。筆者は昨年10月、中国が世界規模で展開する「一帯一路」構想は「トロイの木馬」だと論じた。
習政権は、経済力と国家安全保障を不可分のものと見なしている。その姿勢が最も顕著に表れている分野がエネルギーとテクノロジーだ。
中国の大規模な電力増強
米国がエネルギー政策をめぐり右往左往する一方、中国は着々と建設を進めてきた。中国が2021年以降に追加した発電容量は、米国が250年の歴史を通じて積み上げてきた発電容量の全体を上回る。
もう一度言おう。中国はわずか4年で、米国の電力インフラ全体の容量をしのぐ規模の発電設備を新たに整備したのだ。
昨年だけでも、中国は543ギガワットにのぼる新規発電設備を導入している。想像を絶する規模だ。これには太陽光、風力、石炭、原子力、天然ガスの各発電所が含まれる。ブルームバーグNEFによると、中国は向こう5年でさらに3.4テラワットの新規発電容量を追加する見通しで、これは米国の予想増設量の6倍近くにあたる。
中国が電源拡張を急ピッチで進める目的は何か。AI(人工知能)、ロボティクス、先端製造業など、自国の次世代産業がエネルギー不足に制約されないようにすることだ。
クリーンエネルギーが新たな成長エンジンに
以前にも書いたように、米国の連続起業家イーロン・マスクや米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、中国の圧倒的な電力余剰はAIの計算能力で中国に非常に大きな優位性をもたらすと警鐘を鳴らしている。
筆者が見聞きする限り、この見解には同意せざるを得ない。数字がまさに驚異的なのだ。2025年、クリーンエネルギーは中国の国内総生産(GDP)成長の3分の1強を牽引し、投資増加分の90%超をもたらした。太陽光発電、電気自動車(EV)、電池技術といった分野は中国経済に合計で2兆1000億ドル(約320兆円)あまり寄与した。これはカナダやブラジルのGDPにほぼ匹敵する規模である。
中国のクリーンエネルギー部門をひとつの国家と見立てれば、世界8位の経済大国ということになる。


