2021年に学術誌『Life』に掲載された、より新しい論文で、この仮説を支持するさらなる証拠が示された。著者らは、スピノサウルスの帆を、船の垂下竜骨のようなバショウカジキの背びれと比較した。バショウカジキの場合、背びれは獲物の追跡中に、頭と尾の側方運動において生じる反力を制御するのに役立っている。スピノサウルスの帆の場合は、河川や湖沼の浅瀬で狩りをするなかで、滑りやすく捕えにくい魚に向かって突進する際に、ローリング(横揺れ)やピッチング(縦揺れ)を軽減していたと、著者らは主張している。
しかし、こうした流体力学的機能を全否定する古生物学者たちもいる。例えば、2022年に学術誌『eLife』に掲載された論文では、生体力学モデルを用いた分析により、スピノサウルスがクジラや海生爬虫類のような高い遊泳能力を備えていなかったことが示唆された。同論文の著者らは、帆全体が水面下にあるときには、むしろ抗力が生じ、遊泳効率が下がった可能性があると論じている。
だが、仮に流体力学的機能が限定的なものだったとしても、スピノサウルスが水中を歩行する捕食者だったと考えるのは理にかなっている。帆のおかげで深みを泳ぐことができたわけではないにしても、スピノサウルスが水に出入りする際や、狩りのなかで急旋回するときに、安定を保つのに役立った可能性は否定できないからだ。
スピノサウルスの現代的意義
現在の研究者たちは、スピノサウルスの帆の存在意義は、ただ一つの機能に還元できるわけではないという見方におおむね合意している。この構造はおそらく、複数の相補的な役割を果たすものであって、1つのタスクに特化したものではなかったのだろう。装飾仮説が十分な根拠に支えられている一方で、狩りや水中移動に関連する機能もあったとする解釈は、スピノサウルスの生態への理解を深めるものだ。
まとめると、スピノサウルスの巨大な帆は、彼らが白亜紀で屈指の風変わりな大型捕食者として、河川や湖沼の周辺環境を支配することを可能にした、唯一無二の適応を構成する必須要素の一つだった。このような考えは、現在広く受け入れられている。
スピノサウルスの帆の研究により、生体力学と生態学が交差する複雑な問題に対して、進化が導き出すさまざまな解決法の一つが浮き彫りになった。進化は、「装飾」や「水生適応」といった、従来のカテゴリーを超越するような形で、形態と機能を統合するのだ。
現代の生体力学、古生物学、コンピューターモデリングによって、この巨大肉食恐竜の生態への理解は今後ますます深まっていくだろう。


