サイエンス

2026.02.15 18:00

脳が小さくても「人のように」戦略的思考ができるケアシハエトリグモ

ケアシハエトリグモ(Maizal Chaniago / Getty Images)

ケアシハエトリグモ(Maizal Chaniago / Getty Images)

複雑な計画を立て、柔軟に問題を解決できるのは、大きな脳を持つ生物だけだ。生物学者たちはずっと、そう考えていた。そして当然ながら、米粒よりも小さい脳しか持たないクモは、戦略的思考ができる数少ない生物に属するとは見られていなかった──ケアシハエトリグモ属(学名:Portia)の仲間が研究され始めるまでは。

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ケアシハエトリグモは、ハエトリグモ科に属するグループで、アフリカ、アジア、オーストラリアに生息する。彼らは、不気味なほどにユニークな生存戦略で知られている。事前にルートを計画して狩りを行い、獲物の視界を避けて迂回し、状況の変化に応じて戦術を調整するのだ。

ケアシハエトリグモの存在は科学者たちに対して、複雑な認知能力を持つ種は人類だけではないという不穏な概念を突きつけている。以下では、生物学的研究の成果を踏まえつつ、その理由を説明していこう。

目標に向かうルートの計画を立て、「内的表象」に従って計画を遂行できるクモ

ケアシハエトリグモが他の多くのクモと異なる点は、獲物を捕らえる方法として、粘着力のある巣だけには頼っていないところだ、彼らはその代わりに、能動的に狩りを行う。

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興味深いことに、彼らは他のクモを好んで捕食する。獲物はしばしば、自身より大きく、危険な種も含まれる。彼らは、同種の「共食い」も含めて、クモを食べるクモなのだ。

他のクモを捕食する行為がどれほど驚異的な芸当であるかは、なかなか理解されにくい。説明すると、クモは、視覚と振動を感知する能力が最も優れた陸上生物に属している。すなわち、ケアシハエトリグモが他のクモを狩るためには、相手の防衛または逃避反応を引き起こさないよう注意しなければならないのだ。

『Annual Reviews of Entomology』誌で1996年に発表された先駆的な研究によると、ケアシハエトリグモは、試行錯誤による学習、獲物を欺くこと、そして柔軟な計画立案によって、これを可能にしている。すなわち、標的とするクモの種や、周辺環境の構造に応じて、意図的に狩りの手法を調整できるのだ。そして、こうした卓越した狩りの戦略こそが、ケアシハエトリグモの特異な認知能力を発達させたと考えられる。

ケアシハエトリグモの認知能力に関して、おそらく最も注目に値する発見の一つは、1997年に『Animal Behaviour』誌に発表された迂回行動に関する研究結果だろう。この研究では一連の実験において、クモを高い台の上に乗せ、このスタート地点からだけ獲物の姿が見えるようにした。その場所から獲物のいるところへ到達するには、複雑な経路を移動するしかない。

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翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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