サイエンス

2026.02.15 18:00

脳が小さくても「人のように」戦略的思考ができるケアシハエトリグモ

ケアシハエトリグモ(Maizal Chaniago / Getty Images)

なぜ小さなクモにこのようなことが可能なのか

神経生物学の観点から見ると、ケアシハエトリグモが興味深い理由は、まさしくそのサイズにある(体長7mm程度)。彼らの脳は、哺乳類や鳥類に比べてはるかに少ないニューロンしか持たない。それなのにどういうわけか、高い認知能力に関連づけられる行動を生み出している。

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ケアシハエトリグモの体長は約7mm程度(Linas Toleikis / Getty Images)
ケアシハエトリグモの体長は約7mm程度(Linas Toleikis / Getty Images)

カギとなるのはおそらく、大きさよりも効率が重要という点だ。ハエトリグモの仲間は、高度に発達した視覚系を持ち、大きな前中眼(前列中央にある最も発達した一対)が優れた空間分解能をもたらす。なかでも注目すべきは、これらのクモの神経処理が、感覚入力と緊密に統合されている点だ。それによって、複雑な視覚的光景を極めて迅速に評価できる。

すなわちケアシハエトリグモは、単純な神経反射に頼るのではなく、高度に専門化した「回路」を活用しており、この回路は自らの生態学的地位に沿った意思決定に最適化されている。これは、認知能力は脳の大きさにのみ依存するのではなく、神経系の構造とその活用方法によって発達するという、生物学において支持を拡大しつつある見解を裏付けるものだ。

なぜ進化はこのクモに高い知能を与えたのか

戦略的思考は、進化的にコストが高い。神経組織はエネルギーを必要とし、計画を立てる行為は時間がかかる。ほとんどのクモにとっては、すばやい反射神経さえあればこと足りる。しかしケアシハエトリグモにとって、ミスは命取りにもなる。

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彼らは他のクモを獲物とするため、反撃され、逃げられ、あるいは完全に形勢を逆転されることが起こり得るからだ。その結果、進化の選択圧は、ケアシハエトリグモが特定の結果を予測し、より安全なルートを選択し、その場で戦略を調整できる能力を備える方向へ強くかかったはずだ。

これによって、すばやい反応よりも、先を見る能力を頼りにするクモの属が生まれた。そして興味深いことに、これは、生物学に繰り返し登場するテーマだ。脳の大きさにかかわらず、種の生存が、他の「知能を備えた存在」の行動を予測することに左右される場合、認知能力は、適応における優位性となる。

ケアシハエトリグモとその狩猟戦略は、クモ研究の枠を超えて重要な意味を持つ。なぜなら、計画立案、内的表象、そして柔軟な問題解決能力は、大きな脳を持つ生物にのみ備わる、という概念に異議を唱えるからだ。

これによりケアシハエトリグモは、進化のプロセスを考える際の非常に興味深いケーススタディとなる。おそらく知能とは、脳の大きさによって決まるのではなく、自分が直面する問題に対して、脳をどれだけ細かく調整できるかによって決まるようだ。

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forbes.com 原文

翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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