投資会社の銘柄選定会議に潜入。新人アナリストの「富士急行」推しに飛び出した「1000本ノック」の質問

富士急ハイランドのチケットが安いのは当たり前?

平野:僕からも聞いていいですか? 紙崎君の話を聞いてると、チケットの価格が安いから、チケット値上げ余地があると言っているように聞こえるのね。典型的なのは資料のなかで「富士急ハイランドのチケットはTDLやUSJと比べて安い」と書いてるけど、本当に安いのかを考えなきゃいけない。富士急ハイランドがTDLやUSJと同じ価値を提供しているなら、チケット価格を比較することに意味があると思うけど、僕から見ると、富士急ハイランドの提供している体験価値が他の2社と比べて低いとみなされているから、チケット価格が安くなるのは当たり前なんじゃないかな、と。

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紙崎:それに関しては、富士急ハイランドは他の2社にはない絶叫系もありますし、独自の価値を提供しているので、他の2社よりも安い必然性はないと思います。

平野:それは紙崎君の主観ですよね。独自の体験価値なら、なおさら他の2社とチケット価格を比べることに意味はないんじゃないの? そもそもTDLは過去15年、増えすぎたパーク内のお客さんを減らすためにチケットの値段を上げていると思うよ。来場者数に一定の制限が必要な会社と、これからお客さんを増やそうとしている富士急ハイランドの戦略は根本的に違う。現在のチケット価格が低いから、価格も他の2社に近づきますという話にはならない。

将来と現在の価値に対する裁定

阿部:おそらく富士急行は、テーマパークで儲けようとは思ってないんじゃないかな。メインは富士山とのアクセスで圧倒的な地位にあり、収益性の高い運輸業のバス事業などで儲けようとしているのではないかな。しかも、値上げするのに高速バスは鉄道ほどハードルは高くない。プラス、インバウンドという新しいお客さんが増えていて、彼らはみんな富士山に行きたいはずだよね。

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紙崎:そこはものすごい強みだと思います。富士山と一緒にアトラクションで写真を撮れるという部分が、やっぱりインバウンドにウケているので。

阿部:ただ今日の紙崎君の話というのは、基本はすべて紙崎君の予想に基づくのね。それも大事なんだよ。予想をしっかり立てて、今が安いものを見つけるということは。

だけど投資の一番重要なプロセスというのは、さっき平野君も言ったけど「将来と現在の価値に対する裁定」なんだよ。将来100になるものが今、10ならそれは安いと言えるんだけど、将来のことはわからないじゃない。だからその不確実性を減らすために「わかっていること」を色々と調べるのが僕らの仕事なんだ。

例えば所有する不動産の価値は分かるじゃない。帳簿上は100億円の不動産が、今は1000億円になっているかもしれない。その会社のエクイティ(自己資本)が300億円なら、PBR(株価純資産倍率:時価総額÷自己資本)は1倍以下になる━━そういうことを調べるのがバリューインベスターなんです。そこも調べてみたらいい。(続く)


スパークス・アセット・マネジメント株式会社
運用調査本部

徹底したボトムアップリサーチに基づき、日本株を中心としたアクティブ運用を行うファンドマネージャー・アナリスト(約20名)によって構成される同社の中核部門。
企業価値の分析、少数意見を重視する投資戦略、そして持続的なリターンを目指す調査能力が特徴。
同社が「日本株の運用会社として最大の信頼」を得るための強固な銘柄選択力を支えている。
※今回は同部門の6名が参加する銘柄選定会議に同席

text by Hidenori Ito

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