AI

2026.05.10 18:00

生成AIは「左脳を強化し右脳を弱める」のか? 脳科学が解き明かすAI利用の虚構と真実

Shutterstock.com

Shutterstock.com

このコラムでは、AIと人間に関する新たな憶測のうち、広がりつつあるものを取り上げて検討する。その憶測は、左脳と右脳に関わるものだ。

advertisement

頭の中には左側の脳と右側の脳がある、というおなじみの言説を知っているだろう。右脳は創造的な活動を担い、左脳は論理的・分析的な仕事を担う、とされてきた。

そして最近のトレンドとして興味深いのは、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の広範な利用が、頭の中の左脳の働きを増幅させ、右脳を弱めたり精神的に飢えさせたりする傾向があるというものだ。その結果、私たちは皆、徐々に左脳優位となり、右脳は衰えていく。やがて人類は「左脳優位」の社会になる。全員が高度に分析的になるのだから便利に見えるかもしれないが、欠点は、創造的に問題を解決する能力を失ってしまうことだ。

この話をしよう。

advertisement

壮大な仮説

生成AIとLLMの登場は、私たちの思考のあり方と関係があるのだろうか。

現代のAIは、確かに私たちの思考プロセスに影響を与えると主張する人もいる。その主張の1つに、古典的な「左脳対右脳」理論がある。思考プロセスに関して、脳の2つの半球それぞれに固有の役割があるとする、広く知られた理論だ。

左脳は論理的思考を担うとされる。パズルの解き方を考えたり、算術計算をしたり、分析を行ったりするよう求められると、左脳がその重労働を引き受ける。一方、右脳は創造的な仕事をする。例えば、白いキャンバスに好きなように絵を描くよう求められたとき、右脳が動員され、想像力に富む何かを生み出す。右脳が導くままに、あなたは自分なりのモナ・リザを描く、というわけだ。

この脳に関する考え方は、現代のAIとどのようにつながるのか。

生成AIとLLMが脳の左側を強力に増幅している、というまことしやかに囁かれている説がある。

右脳を凌駕する左脳の乗っ取り

話はこうだ。

何百万、何千万という人々が、人生で直面する問題や課題を考え抜く手助けとして、日々AIを使っている(OpenAIは、週あたり8億人がChatGPTをアクティブに利用しているとしている)。こうしたAI利用のすべてが左脳を補強している、と推定される。私たちは知らず知らずのうちに論理的思考を強められている。単にAIに質問しているだけだと思っていても、実際には、その回答が心を突き動かし、ますます分析的で論理的な方向へと向かわせる、というのだ。

一方で、ここが難点だが、右脳は飢えさせられているらしい。AIは本質的に左脳へ熱心に餌を与える。その一方で、右脳には精神的な栄養をほとんど与えない。結果として、右脳は思考における実質的な役割を失い、衰退に直面している、とされる。

つまり、人類全体が潜在意識のうちに、左脳を使って拡張し、右脳を投げ捨てるよう条件付けられている、という主張だ。人類は創造的思考を失う。私たちは思考がロボット化し、左脳に完全に支配される運命なのだろうか。

次ページ > 半分空ではなく半分満ちたグラス

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事