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2026.02.12 11:00

AI時代の秘密兵器? 「ゲーミングPCで稼げる」仕組みを謳うSaladとGolem

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業界データによると、ビットコインマイニング(採掘)企業は過去18カ月間に総額650億ドル(約9.9兆円。1ドル=153円換算)のAIインフラ関連契約を締結し、自社の電力契約やデータセンターをグーグル、アマゾン、マイクロソフトといったハイパースケーラー(超大規模クラウド事業者)向けのホスティング施設へと転換してきた。筆者が先日執筆した記事でも触れたが、マイニング業界はAIブームの波に乗ろうと、「撤退組」「ハイブリッド組」「堅持組」に分かれつつある。

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だが、データセンターを使わない「第4の道」もある。それらは別種の暗号資産インフラとしてスタートしたものたちだ。すなわち、過去10年にゲーマーやマイナーに売られ、今AIの仕事に動員されつつある、数百万台のコンシューマー向けGPU(画像処理半導体)のことだ。

Salad.comのCEO、ボブ・マイルズは次のように語る。「プルーフ・オブ・ワーク(計算量による取引承認方式)とビットコインマイニングが私たちにもたらしたのは、インフラ構築の費用を賄うための長年にわたる需要でした。ChatGPTが登場した時、ゼロからのスタートではなかったのです」。

マイニングの抽象化レイヤーからAIクラウドへ

マイルズは2018年、ゲーマーがウォレット設定、プール選定、コマンドライン操作に煩わされずにイーサリアムをマイニングできる「抽象化レイヤー(手間を隠して簡素化する仕組み)」としてSaladを創業した。発想は単純で、アプリをダウンロードし、ゲームをしていない時間にGPUを使わせ、報酬を稼いでゲームやギフトカードに交換できるようにした。

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イーサリアムがプルーフ・オブ・ステーク(PoS、保有量に基づく承認方式)へ移行してマイニング収益が消えたとき、Saladにはすでに核となる資産が残っていた。数万台規模のコンシューマーGPUのネットワークと、それらを管理するオーケストレーション(統合管理)ソフトウェアだ。そして同社は分散型AI推論へと舵を切った。

現在、Saladは190カ国で、毎日稼働するコンシューマーGPUを6万台超運用し、Stability AIやDiscordなどの企業顧客に提供している。売上高は1040万ドル(約15億9000万円)に達した。同社は、エヌビディアのH100相当のタスクでGPU時間あたり約0.99ドル(約151円)という水準で価格を設定している。AWS、Google Cloud、Azurenの場合は3〜7ドル(約459円〜約1071円)程度だという。

マイルズはこう述べる。「明らかに、ある時点から制約になるのはシリコンそのもの、つまりチップではありません。どこに置くのか、どこで運用するのか、どう電力を供給するのかが問題になります。現在世界を見回すと、インターネットにつながったゲーミングPCが約4億台あり、その大半は1日の多くの時間を遊休状態で過ごしています。AI需要が爆発的に伸びるこの世界で、これは非常に価値の高いデバイスです」。

これらのGPUは、言語モデルの推論を走らせたり、Stable Diffusionで画像を生成したりするほか、創薬に向けた分子動力学シミュレーションも実行している。いずれも分散したハードウェア上で並列化しやすいワークロードだ。

Saladの顧客は、このインフラをテキストから画像の生成、動画レンダリング、大規模言語モデルの推論に利用している。マイルズが最も期待しているのは、イン・シリコ創薬(計算機上で行う創薬)だという。研究者が分子動力学シミュレーションを回し、薬の候補をデジタルに合成して試験する分野で、研究の制約要因は「確保できるGPUサイクル(演算時間)の量」だと彼は言う。

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翻訳=酒匂寛

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