経営・戦略

2026.02.11 16:30

企業価値2600億円、米小売店を席巻する「スウィートティー」企業を率いる女性CEO

Shutterstock.com

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米国南部には、濃く煮出した熱い紅茶に大量の砂糖を溶かし込み、急冷して飲む「スウィートティー」という独自の文化がある(編注:日本人がイメージするアイスティーとは、濃さと甘さが異なる)。現地の家庭や飲食店などで、生活に欠かせない定番の飲み物として愛されているほどだ。トランプ政権のMAHA(メイク・アメリカ・ヘルシー・アゲイン)による砂糖離れが進む米国市場において、あえて本物の砂糖の使用にこだわり、この分野で支持を集めているのが「Milo’s Tea Company(ミロズ)」だ。

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Milo’sは保存料を使わず、巨大なガロン容器(約3.8リットル)で冷蔵販売する戦略で、全米の小売店を席巻した。3代目CEOのトリシア・ウォールワーク(50)が、70年以上続くこの家族経営を引き継いだ当時、会社は従業員40人の中小企業にすぎなかった。アラバマ州の工場は数日に1度稼働するのみという停滞した状態から、彼女はいかにして組織を変革したのか。現在では従業員数1000人を超え、3つの工場が24時間365日フル稼働する、事業価値17億ドル(約2600億円)の成長企業へと変貌を遂げている。

年商約765億円を達成、「Milo’sは、まさに米国企業の成長物語そのものだ」

「Milo’s Tea Companyは、まさに米国企業の成長物語そのものだ」と、トリシア・ウォールワークは語る。彼女の祖父ミロ・カールトンは、バーミンガムで営んでいた自らのハンバーガー店でスイートティーの提供を始め、その店を1980年代にファストフードチェーンへと拡大した。「私たちの成長曲線は本物だ。それを実感として知っているのは、私自身がその過程を見てきたからだ」とウォールワークは語る。

ウォールワークは、2025年の年商が推定5億ドル(約765億円。1ドル=153円換算)の家族経営の事業を率いている。過去13年間にわたりMilo'sを率いてきた彼女は、米国で最も人気の冷蔵アイスティーブランドへと成長させ、ケース出荷量を10倍に拡大。年率20%超の複利成長を維持している。

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砂糖へのこだわりを貫き、冷蔵茶カテゴリーで売上トップに

現在米国では、トランプ政権のMAHA(メイク・アメリカ・ヘルシー・アゲイン)運動を支持する米国人は、人工甘味料に切り替えたり、砂糖を食生活から排除したりする傾向にある。その中でMilo'sのスイートティーは、1杯あたり26グラムものサトウキビ糖を使用し、「ピュアな非遺伝子組み換えの砂糖」である点を強調している。この製品は熱心な顧客層を獲得しており、2025年の生産量は約2億ガロン(約7.6億リットル)、提供杯数に換算すると約20億杯に達した。ある食品業界の投資家は、この数字に触れて、「砂糖の消費は今なお堅調だ」と評していた。

現在もなおアラバマ州を拠点とするMilo’sは、ニールセンIQによれば、2025年に冷蔵茶カテゴリーで売上トップのブランドとなり、同社の定番であるガロン容器のスイートティーは、全米の小売市場でレディ・トゥ・ドリンク(RTD)茶の販売数量1位に躍り出た。支出額ベースで比較すると、常温保存のブランドを含めても、液体茶市場全体で最も売れているブランドとなっている。

例えば、アリゾナ・アイスティーの年間売上は約20億ドル(約3060億円)と推定されるが、そのすべてが茶製品によるものではない。Milo’sのレモネードも現在、米国内で最も成長が速いブランドとなっており、「予測を大幅に上回る勢いだ」とウォールワークは語る。販売網も、スイートティー文化が根付く南部にとどまらない。全米6万店舗で販売されているMilo’sの飲料は、アラスカやハワイを含む4200店舗のウォルマートにも並んでいる。

Milo’sは、アラバマ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州にある自社工場で、本物の茶葉を使って紅茶を製造している。これら工場は合計で、1分あたり約1800本のボトルを生産できる能力を持つ。製造コストはかかるものの、収益性は高い。フォーブスは、同社の年間のEBITDAマージンを20%と推定している。

カールトン家が事業を100%保有し、企業価値は推定約2601億円に達する

ウォールワーク、父ロニー、継母シーラ、妹レスリーを含むカールトン家は、この事業を100%保有している。フォーブスは、収益性を基に、この事業の価値が保守的に見積もっても17億ドル(約2601億円)に達すると試算している。ウォールワークによれば、家族は売却するつもりはないという。

「私たちは、これから直面する課題が、3年から5年といった短いスパンや四半期決算の枠組みでは解決できず、世代をまたいで取り組むべきものだと考えている」とウォールワークは語る。彼女は、同社の事業がゼロ・ウェイスト認証(廃棄物ゼロ認証)を取得していることや、利益の1%を地元の教育・環境分野の慈善団体に寄付していることを挙げ、「大切なのは目的意識だ。より多くの人に影響を与えられるよう、事業を育てていくという強い使命感を私たちは感じている」と語る。

小売売上高は2026年末までに約1530億円の見込み、世界水準の企業を目指す

Milo’sの小売売上高は、2026年末までに10億ドル(約1530億円)に達する見通しで、これは当初の想定より1年早いペースとなっている。フォーブスは、これが実現すれば、同社の年間売上高が約7億5000万ドル(約1148億円)になると推定している。そこに到達するには膨大な量のスイートティーが必要になるが、取締役のマイケル・ペレグリーノは、ウォールワークがその準備を整えていると考えている。

「彼女は常に最善のやり方を探し、世界水準の企業を築こうとしている」と、食品メーカーのサルジェントの最高執行責任者(COO)を兼任するペレグリーノは述べている。「彼女は決して現状に満足しない、優れたリーダーだ」。

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翻訳=上田裕資

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