経営・戦略

2026.02.11 16:30

企業価値2600億円、米小売店を席巻する「スウィートティー」企業を率いる女性CEO

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祖父ミロ・カールトンが戦後にレストランを開業し、ハンバーガー店へと拡大

ウォールワークの祖父ミロ・カールトンは、第二次世界大戦に従軍して帰還した翌週に、祖母にあたるベアと結婚した。1946年、2人はアラバマ州バーミンガム北部で、小さなレストランを開業し、ハンバーガー、パイ、スイートティーを提供した。この店は40年間営業を続けた。「好きになるか、ならないか、はっきり分かれる店だった」とウォールワークは振り返る。

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1980年代になると、ウォールワークの父ロニーが両親の事業に加わり、妻のシーラとともに働き始めた。家族は1982年、ハンバーガーカウンターの業態をフランチャイズ展開することを決めた。アラバマ州各地に店舗が増えるにつれ、カールトン家は約20のフランチャイズ店に、ハンバーガーソースやスイートティーを配送するようになった。

多くの客がスイートティーを持ち帰ることに気づき、ガロン容器で販売開始

そして1989年、継母シーラが多くの客がスイートティーを持ち帰りで購入していることに気づいた。これをきっかけに、レストランの宣伝も兼ねて、近隣のマーケットや地元スーパーで茶の販売を始めた。家族はスイートティーをガロン容器で販売することを決めたが、ウォールワークはこれについて「意図的な判断だった」と語る。「保存料を使っていないため、牛乳と同じように扱う必要がある商品だと、消費者に伝えたかった」。

その年のうちに、スイートティーの需要は店の外にも広がった。ロニーは、バーミンガムにある本社からほど近い、アラバマ州ジャスパーに開設された同州初のウォルマート・スーパーセンターに、スイートティーを納品した。

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2002年、家族はレストラン事業を1000万ドル(約15億3000万円)未満で売却する決断を下した。ただし、買い手は茶事業に興味を示さなかったため、この事業は引き続きカールトン家の手元に残った。

トリシア・ウォールワーク、弁護士を経て事業に戻り年商約61億円からの立て直しを図る

高校時代の夏休みを、家族が営む小さなスイートティー工場で働いて過ごしたウォールワークは、オーバーン大学在学中にベジタリアンになった。「私の学費は、ハンバーガーの事業から生まれたものなのに、皮肉なことだった」と彼女は振り返る。哲学とスペイン語を専攻したウォールワークはその後、アラバマ大学のロースクールに進学した。「家族の事業に入るつもりは、まったくなかった」という。

しかし2004年、29歳だった彼女は、数年間勤めた法律事務所の仕事に幻滅し、スイートティー事業に1度挑戦してみることを決め、法務顧問兼副社長として入社した。当時の事業は、家族以外の人物が経営しており、フレーバーは2種類のみ。従業員は16人で、容器への充填もすべて手作業だった。

数年がたち、ウォールワークは飲料業界こそが自分の進む道だと確信するようになった。そして、家族のほかの株主たちにCEO就任を打診した。2012年に正式にCEOに就任すると、当時は年商約4000万ドル(約61億円)、年間約480万ケースを生産していた事業の抜本的な立て直しに乗り出した。

CEOに就任後、ウォールワークはウォルマートでの流通を拡大し、パブリックス、クローガー、ダラー・ジェネラルといった大手小売業者との新たな取引を獲得。売上の節目を次々と突破していった。初期の戦略は、ただ一つだったという。「とにかく売ることを考えた。どうすれば顧客に商品を届けられるか。そればかり考えていた」。

「会社の規模が2倍になるたびに、私は3倍成長しなければならない。始めた頃とは、まったく違うリーダーになったと思う」とウォールワークは語る。

事業への再投資を続け、過去5年間で2つの新たな製造施設を建設

彼女は事業への再投資も続けており、過去5年間で2つの新たな製造施設を建設した。最初の工場は、パンデミック初期の数週間というタイミングで稼働を開始し、彼女のCEO在任期間で最大の売上成長期を支えることになった。直近では2025年春に、サウスカロライナ州スパータンバーグ郡に、製造と物流を担う2億ドル(約306億円)規模の新施設を完成させた。この工場では、129の求人枠に対して2万3000人が応募したという。

ウォルマート、最も優れた取引先ブランドの1つとして革新性を評価

米国ウォルマートでパントリー(食品棚)部門を統括する上級副社長のメロディ・リチャードは、供給の安定性という点で、「Milo’sは最も優れた取引先ブランドの1つだ」と評価する。また、「私たちと共に新商品を形にしていく、最も革新的なサプライヤーの1社」だとも語り、Milo’sをウォルマートで最も成長の速いブランドの1つに挙げる。ただし、彼女が本当に際立っていると感じているのは、ウォールワークのリーダーシップだという。

「トリシアは聡明で革新的で、卓越性と成果の創出に強くコミットしている。また同時に、思いやりと謙虚さをもって人を導き、周囲に力を注ぐ人でもある」とリチャードは語る。「私はそういう姿勢に強く惹かれるし、トリシアに出会ったことで、より良いリーダーになりたいと思うようになった」。

新たな飲料カテゴリーに参入、「これからも成長し続けたい。アクセルを踏み続けている」

Milo’sは現在、スイートティーとレモネードを合わせて、9種類のフレーバーとそれぞれ3つのサイズ展開で、年間約6200万ケースを生産している。それでもウォールワークは、主力の茶事業や主要小売顧客に加え、コンビニエンスストアや会員制倉庫型店舗への新たな流通、レストランや業務用卸を通じた展開によって、今後も2桁成長が続くと見ている。2026年は新たな飲料カテゴリーにも参入し、フレーバーを11種類に拡充。季節限定商品の投入を増やすほか、無糖ラインの強化も進める計画だ。

「私たちは成長するビジネスを築いてきたし、これからも成長し続けたい。アクセルを踏み続けている」とウォールワークは語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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