21歳の「4回転の神」は、かつて不可能と思われたプログラムで金メダルの最有力候補と目されている。フィギュアスケート界きっての稼ぎ頭はしかし、メダルや賞金だけが目当てで五輪の舞台に立ったわけではない。──「ザ・ロック」ことドウェイン・ジョンソンのようになりたいのだという。
2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪の開幕に先立ち、米NBCテレビのスポーツ中継部門NBCスポーツは昨年、男子フィギュア選手のイリア・マリニンに実写版映画『ヒックとドラゴン』のシーンを再現したクロスプロモーションCMへの出演を依頼した。マリニンはアニメ版の大ファンで、ドラゴンのキャラクターキーホルダーを常に携帯し、ぬいぐるみを「心の支え」と呼ぶほど。一も二もなく出演を承諾した。
だが、撮影当日にマリニンを何よりわくわくさせたのは、テレビ番組制作の舞台裏を初めて垣間見られたことだった。マリニンが目を輝かせて振り返った瞬間を、マーケティング担当スタッフのシェリル・シェイドはよく覚えている。「僕もやりたい」と彼は言ったのだ。
シェイドはマリニンと仕事を始めてからの1年半で、何度もこの言葉を耳にしてきた。出会った当時、まだ19歳ながら早くもフィギュアスケートの未来を担う存在とみなされていたマリニンは、リンクの外でやってみたいことや叶えたい夢を模索し始めていた。テレビ、ファッション、ビデオゲームにスケートボード、とにかく何でも端から試してみる主義なのだとシェイドはすぐに理解した。
「僕の目標の一つは、もちろんスケート関連だけれど、絶対に世界的な有名人になることだ」とマリニンは語る。「ザ・ロック(ドウェイン・ジョンソンのリングネーム)がプロレスで名を揚げて、それから俳優に転身し、さまざまな分野で活躍しているように、あんなふうな存在になりたい」
当然ながら、直近12カ月間の収入が推定70万ドル(約1億1000万円)のマリニンが、2024年に8800万ドルを稼ぎ上げフォーブスの「世界で最も稼いだ俳優」ランキング1位に輝いたドウェイン・ジョンソンに張り合おうとするなら、まだまだ道のりは長い。だがフォーブスの推計に基づけば、この若き米国人はすでに今大会で最も高収入のフィギュアスケート選手であり、それでいて収入の伸びしろはたっぷりあるとほとんどの専門家はみている。



