しかし、何よりもまずマリニンは金メダルを獲得しなければならない。達成できれば既存のスポンサー契約に設定されたインセンティブが発動し、収入額は100万ドル(約1億6000万円)を超える見込みだ。これはフォーブスの推計に基づけば、2022年の北京冬季五輪で金メダルに輝いたネイサン・チェンが五輪前の1年間に稼いだ収入と同等である。
さらにマリニンの演技が文化的瞬間のブレイクスルーとなり、その名前が世間に広く知られるようになれば、2030年に開催されるフランスアルプス冬季五輪に向けて彼の収入額は急増する可能性がある。
「五輪で優勝し、その大会で最高の選手に輝くというのは意義あることだが、驚くべき物語を携えて現れた選手が世界の注目を集めるような出来事はそうそう起こらない」とオクタゴンのカーライルは指摘した。「(ミラノ・コルティナ)大会後、マリニンは鮮烈な飛躍を遂げるだろう。初出場の五輪で、これまで誰も成し得なかった技を次々と披露する姿が世界中に映し出されるからだ」
マリニンがどれだけ稼ぐのか、その比較対象となるのは米国代表の2選手だ。直近1年間で推定400万ドル(約6億2800万円)を稼いだクロエ・キム(スノーボード)と、同800万ドル(約12億5700万円)のリンゼイ・ボン(アルペンスキー)である。一方、冬季五輪の経済的限界に挑むアジア系選手も存在する。フリースタイルスキー中国代表のアイリーン・グー(谷愛凌)の年収は今大会最高の推定2300万ドル(約36億1300万円)。また、かつて女子フィギュア韓国代表として2度の金メダルを獲得したキム・ヨナは、競技生活最後の2014年に1600万ドルを稼ぎ上げた。
高い目標ではあるが、マリニンにはそれを狙えるだけの時間がある。2034年開催予定のソルトレークシティ冬季五輪を現役最後にする意向の彼は、まだあと2回の五輪出場機会がある。
将来計画に胸を膨らませつつも、マリニンは最近こう語っている。五輪開幕前の最後の日々を、比較的平穏で無名のうちに味わおうとしているのだと。
「それについては確かにたくさん考えたよ。五輪後は状況が一変するだろうとも思っている。それは本当に楽しみでもあるけれど、同時にちょっと怖いんだ。だって、何が待ち受けているか分からないからね」


