現在のところマリニンの収入源は、コカ・コーラやXfinity(エクスフィニティ)といった五輪公式スポンサーにほぼ限られている。公式スポンサーの活動は国際オリンピック委員会や各国オリンピック委員会のガイドラインに基づき、選手を広告に起用する際の条件や拘束時間がチェックされている。
シェイドはこの判断について、マリニンに過度の負担がかかるのを防ぐためだったと説明しつつ、フィギュアスケートというスポーツへの注目が米国では4年に一度しか高まらない現実も見据えていたと明かした。当初、マリニンをスポンサー候補企業に売り込むのは苦労の連続だったという。
「正直なところ、スポンサーの多くはマリニンの名前すら知らなかった。グーグル検索で調べて『ああ、男子スケーターか。何がそんなにすごいんだ?』という反応だった」
しかし、すぐにスポンサーたちはマリニンの才能と、両親がウズベキスタン代表の五輪フィギュア選手だったという血統、そして何より「4回転の神」という市場価値の高いニックネームに気付いた。
バージニア州で生まれ育ったマリニンは、13歳の時に初めて競技会で4回転ジャンプに成功し、インスタグラムのユーザーネームを「4回転の神(クワッド・ゴッド)」に変更した。自ら名乗ったこの愛称は、やがて自己実現を果たす誓いとなった。そしてマリニンは6種類あるジャンプ全てで4回転を習得し、空中で4回転半する最も難易度の高いジャンプ、4回転アクセルを公式大会で成功させた史上初かつ唯一の選手となった。
マリニンは、この大技とニックネームが自身のパーソナルブランドとなったことを自覚している。
「本名よりも『4回転の神』のほうが知名度が高いのは間違いない」とマリニンは言う。「これにはメリットもある。唯一無二のあだ名があれば、観客の目に留まりやすくなるから」
米スポーツマネジメント会社オクタゴンで五輪担当マネジングディレクターを務めるピーター・カーライルは、「4回転の神」というニックネームはテレビ視聴者にとって「あらかじめパッケージ化された文脈」を提示していると説明する。視聴者に何を見るべきか、なぜそれが重要なのかを瞬時に理解させられるのだ。「これは非常に有益だ。人々の関心を引ける時間は限られている」


