経済・社会

2026.02.09 17:15

大勝した高市首相 求められるトランプと習近平の考えを見抜く力

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陸自東北方面総監を務めた松村五郎元陸将は「NDSは、インド太平洋地域でのDecent
Peace(まずまずの平和)をうたっている。米中の本格的な武力衝突は望まない一方、中国が認知戦や経済的な嫌がらせによって台湾を攻め立てても、米国は黙認する可能性がある」と語る。そのうえで、松村氏は「防衛力整備は進めるとしても、中国を挑発する発言は避け、軍事面では専守防衛に徹する姿勢を示すことが、トランプ政権の戦略に一致する方法ではないか」と指摘する。

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また、松村氏は「湾岸戦争やイラク戦争の時代は、米国が多国籍軍を主導し、そこに参加することを求められた。米国が本格的な戦争を避けようとしている現在は、日本防衛をより強固にすることが日米の戦略にかなう。安倍政権の時代まで考えていたような海外での貢献を、今のトランプ政権は求めていない」とも語る。すなわち、高市氏が総選挙中に語った「日本が逃げれば、日米同盟がつぶれる」という状況ではないということだ。

トランプ氏は5日のSNSへの投稿で、高市氏を「米大統領として完全かつ全面的に支持する」と表明した。日米関係筋は「トランプ氏は高市氏を個人的に非常に気に入っている。しかし、それは高市氏の対中姿勢を全面的に支持するという意味ではない」と語る。トランプ政権が日本に求めているのは、第1列島線の守りを静かに固めて、中国をおとなしくさせることであり、中国を刺激して状況を緊張させることではないという。

高市氏が米国に肩入れする姿勢を強調する背景には、トランプ氏の10月の訪日の際、個人的な強い信頼関係を作ったという自負があるのだろう。確かに、トランプ氏は高市氏と同乗した機密性の高い大統領専用ヘリコプター「マリンワン」のなかで、高市氏がトランプ氏と一緒に自撮り写真を撮ることを許し、「明日、韓国に行くが一緒に乗っていくか」という軽口までたたいたという。また、「安倍晋三元首相の後継者」を自任する高市氏として、単純に安倍氏の外交を踏襲すればよいと考えているのかもしれない。政府関係者によれば、高市氏は「なんでも自分で抱え込みたがる性格」で、なかなか周囲の助言を聴こうとしないという。

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高田氏も松村氏も「日米同盟の堅持はもちろん必要だ」と口をそろえる。日本が単独で中国を抑止できない以上、唯一日本を軍事的に支援する能力と意思がある米国との関係は非常に重要だ。高田氏は「11月の米中間選挙の結果にもよるが、トランプ氏が再び、対中強硬路線に戻る可能性もある」と指摘する。

高市氏に今求められていることは、米NDSを奇貨として、日本の国策である専守防衛をより声高に唱えつつ、防衛力の整備を進める「(能力を隠して好機を待つ中国の外交戦略である)韜光養晦(とうこうようかい)」の姿勢だろう。

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文=牧野愛博

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