リーダーシップ

2026.02.09 12:30

AIは思考を助けるのか、奪うのか──今「認知スキル」を鍛えるべき理由

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苦労がなくなると成長も消える

ピカードにとって転機となったのは、AIが日常の思考から摩擦をいかに滑らかに取り除くかに気づいたときだった。「苦労こそが学びと成長の場だ」とピカードは言う。「テクノロジーがそれを完全に取り除いてしまえば、明確に考えたり適応したりするのに頼っている能力を鍛える機会を失う」

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その便利さには代償がある。「隠れたコストは萎縮だ」とピカードは説明する。「効率が思考を支えるのではなく、思考に取って代わると、注意や判断、記憶といったスキルがやがて弱くなっていく。その時は努力するエネルギーを節約できるが、長期的には認知能力を減らしてしまう」

特に危険にさらされるスキルは、基礎的なものなのだ。「持続的な注意力が最も軽視されており、それに続いてワーキングメモリ、そして文脈を超えてアイデアを結びつける能力が挙げられる」とピカードは語る。「これらはかつては自然に鍛えられていたスキルだが、今では意図的に訓練しなければならない」

脳トレとリーダーシップの再考

ピカードはまた、認知能力の改善に関する一般的な思い込みにも異議を唱える。「多くの人は、改善には長時間のセッションや複雑なプログラムが必要だと思っている」と言う。「実際はセッションの長さよりも継続性の方がはるかに重要だ。科学に基づき、現実世界への転移を想定して設計されたエクササイズであれば、1日に数分集中するだけでも意味のある変化を生み出せる」と主張する。

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即座に答えが得られる時代において、批判的思考の強化は自動化への抵抗を意味する。「人が自分で考えなければならない経験を作ることだ」とピカードは言う。「つまり、想起、推論、関連付けを要求するパズルや課題、学習ツールを用意することだ。批判的思考は自動化によってではなく、関与によって改善される」

リーダーにとっては特に重要だ。「最大のリスクは判断力の低下だ」とピカードは警告する。「リーダーが独立した分析を練習しなくなると、微妙なニュアンスや偏り、二次的影響を見抜く力が弱まる。AIは意思決定を支援すべきであり、その背後にある思考そのものを取って代わるべきではない」

小さな習慣が長期的な強さを生む

解決するのに、大がかりなライフスタイル改革は必要ではないとピカードは強調する。「努力が意図的で継続的なら1日5〜10分で十分だ」と言う。「精神のフィットネスは、身体のフィットネスと同じように機能する。小さな日々の行動が積み重なって長期的な強さになる」と語る。

誰でも実践できる具体的な方法はどんなものだろうか。ピカードの答えはシンプルだ。「まず、すぐにAIに頼らないこと。少し立ち止まり、自分でその問いに答えられないか考える。その小さな間が、思っている以上に重要だ。なぜなら記憶と推論を使い続けることになるからだ」とピカードは言う。

「次に、本当の人間同士の交流を意識することだ。対面での会話は、認知的にも感情的にも健康に大きな効果がある」。そして最後にこう語る。「受動的なスクロールの一部を、パズルやゲーム、新しい学びなど、少し居心地が悪いと感じるような挑戦に置き換えてみるといい。こうした小さな選択が積み重なり、答えが常に簡単に手に入る世界でも心をシャープに保つのに役立つ」

AIは消えることはなく、消えるべきでもない。だがピカードのメッセージは、進歩が私たちの認知的な強さを犠牲にして成り立つものであってはならないと喚起するものだ。容易さが最適化された世界において、考えることを選ぶことは過激な選択になるかもしれない。そしてザ・マインド・カンパニーの取り組みが示すように、未来を手にするのは自分の思考を外部に丸投げする人ではなく、思考を鍛え続ける人なのだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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