UVZの資金不足の原因としては2つの可能性が考えられる。ひとつは、戦時下であっても事業が採算に合っていないという可能性だ。この場合、2016年に見られたような、深刻な汚職や杜撰な経営管理、あるいはその両方が続いていることが示唆される。もうひとつの可能性は、事業自体は採算がとれていても、ほかの軍需企業でも起こっているように国防省からの支払いが滞っているため、資金繰りにあえいでいるというものだ。その場合、ロシア経済が急速に悪化している現状も踏まえれば、支払いがこの先早まるとは想像しにくい。
資金は問題である。ロシアのような国であっても、いつまでも売り掛けで戦車をつくり続けることはできないのだ。
そもそもUVZのサプライヤー側が納品できるとも限らない。戦車関連の無線機器を製造するモスクワのある企業は、生産ノルマの未達に陥った可能性がある。
従業員の不満
サプライヤーとの関係が悪いとすれば、従業員との関係は輪をかけて悪い。西側で「首を切り合うような(cut-throat)ビジネス」と言う場合、それは競争が激烈だという意味の比喩だが、UVZのある従業員は会社側から賃金を大幅に削減されたため、文字どおり自分の首を刺したと報じられている。
UVZの経営トップは2019年、同社の平均賃金は月4万ルーブル(現在の為替レートでは約8万2000円)で、工場が立地するロシア中部ニジニタギル市では高いほうだと主張していた。しかし賃金カット後の2021年、工場の上級職者はボーナスを入れても月収はせいぜい3万ルーブル(約6万1000円)程度だと明かしている。これは地域の平均を大きく下回る水準だ。
しかも、こうした低い賃金ですらきちんと支払われていない可能性がある。UVZは、賃金が満額支払われていないと経営トップに訴える動画を公開した従業員2人を相手取り、訴訟を起こした。2人は動画のなかで、設備が故障していて使用できないとも語っていた。おそらく、設備が稼働不能であったために生産ノルマを達成できず、それを賃金カットの口実にされたのだろう。


