スペースXやザランドなど、セカンダリー株に投資する機会を見送る
テック業界の大物と幅広い人脈を築いていたにもかかわらず、エプスタインは実際には、現在では世界有数の企業となった会社のセカンダリー株の購入を持ちかけられることが多かった。彼は、極めて高い利益が見込めた可能性のある機会をいくつも見送っており、その中には、スペースXへの2度の投資機会が含まれていた。
米司法省が公開したメールによれば、2017年、ある関係者が、当時評価額220億ドル(約3.5兆円)だったスペースXのセカンダリー株への投資に関心があるかを、エプスタインに尋ねていた。エプスタインは、マスクと10年以上の付き合いがあったにもかかわらず、現在の評価額が1兆2500億ドル(約19.6兆円)のスペースXへの出資について、具体的な提案を受けた記録は、彼のメールに残っていない。
同様にエプスタインは、英国のフィクサーから金融業者に転じたイアン・オズボーンが2011年にメールで持ちかけた、ドイツのEC大手ザランドへの出資案についても、実際の投資には踏み切らなかったようだ。ザランドは2014年に評価額68億ドル(約1068億円)で上場していた。
イアン・オズボーンに対し、SPAC戦略について助言していた形跡
メールからはまた、過去にエプスタインの島を訪れたこともあったとされるオズボーンが、複数のファンドについて、エプスタインに出資や助言を求めていた様子もうかがえる。ある時点では、オズボーンと、ドイツのビリオネア一族であるメディア帝国の後継者ヤコブ・ブルダが運営する、ソーシャルメディア企業に投資する6000万ドル(約94億円)規模のオフショアファンド案が回覧されたが、この構想は実現しなかった。ブルダの広報担当者ジュリア・コーンはフォーブスに対し、『ブルダは、オズボーンのファンドであるヘドソフィア(後述)への投資をエプスタインに勧誘したことは1度もなく、ブルダとエプスタインの間には関係は一切ない』と回答した。
オズボーンはまた、自身が立ち上げた秘密主義的なテック投資ファンド「ヘドソフィア(Hedosophia)」について、初期段階の提案資料をエプスタインに送っている。「この名前は、ギリシャ語の『快楽』と『知恵』を組み合わせたものだ」と、オズボーンは2012年のメールで説明していた。オズボーンの広報担当者は、「エプスタインがヘドソフィアに投資したことは1度もなく、両者の間に金銭的な関係は存在しなかった」と書面で述べた。
その後、ヘドソフィアは、スポティファイ、スペースX、ボルト・フィナンシャル(すでに消滅したJawboneも含む)といったスタートアップに投資していった。同社は、チャマス・パリハピティヤが率いるソーシャル・キャピタルと組み、特別買収目的会社(SPAC)を設立したことで最もよく知られるようになる。これらSPACを通じて、リチャード・ブランソンの宇宙旅行スタートアップであるヴァージン・ギャラクティックや、不動産テック企業のオープンドア、医療保険会社のクローバー・ヘルスが上場したが、現在の評価額はいずれも上場時の水準を大きく下回っている。
エプスタイン自身はヘドソフィアに資金を投じていなかったものの、SPAC戦略についてオズボーンに助言していた形跡がある。2012年のメールでオズボーンは、「あなたが修正してくれたモデルには本当に満足している。企業型(SPAC型)の構造はファンドよりはるかに優れており、ホワイトボードで描いてくれたコンセプトは、その完成形だ」と書いていた。
エプスタインは、2019年7月に逮捕される直前まで、新たなテクノロジー分野を探し続けていた。同年1月、彼はティールに宛てたメールで、「最近、何か面白い動きはあるか。若返りの技術か、植物生物学か、それとも量子コンピューティングか?」と問いかけていた。ティールがこれに返信したかどうかは分からないが、数カ月前にエプスタインが送った別のメールには、その距離感をうかがわせる言葉が残っていた。「最近、音沙汰がないが?」と、彼は記していた。


