北米

2026.02.07 17:00

ジェフリー・エプスタインの「謎めいたテック人脈」と不可解な投資遍歴

ジェフリー・エプスタイン(Photo by Rick Friedman/Rick Friedman Photography/Corbis via Getty Images)

性犯罪者との取引による、評判上のリスクが懸念されていた

エプスタインの周囲にいた人々の一部は、未成年者の性的人身売買で有罪判決を受けた人物とビジネスを行うことが、評判上のリスクになり得ることを認識していたようだ。暗号資産投資家のジェレミー・ルービンは2016年、ビットコイン・オプション取引所LedgerXへの投資をめぐり、エプスタインに宛てたメールでこう書いていた。「特定の関係を嫌う人もいる。正当な理由がある場合も、そうでない場合もだ。あなたの名前は、米商品先物取引委員会(CFTC)にとって問題ないのか」。

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2018年7月にルービンとエプスタインは、ビットコイン採掘企業Layer1のデューデリジェンス用の電話会議に、エプスタインが身元を明かさずに参加する方法について話し合っていた。「そうしないと、投資を検討している人があなたの名前をグーグル検索して、怖じ気づくかもしれない」と、ルービンは別のメールで記していた。

資料からは、エプスタインがLayer1やLedgerXのいずれかに実際に投資していたかどうかは確認できない。LedgerXは、2021年にFTXに買収された。ルービンは取材要請には応じなかったが、Xへの投稿でこれらのメールが「被害を受けた人々に正義をもたらし、我々の社会における腐敗の本質をより深く理解することにつながることを願っている」と述べた。Layer1は、同社がエプスタインから資金を受け取っていないと説明した。

多くのベンチャーキャピタリスト・投資家、AI研究者などと広範なネットワークを構築

資料によれば、エプスタインはほかにも多くのベンチャーキャピタリストやテック投資家と交流を持っていた。その中には、ロシアのビリオネア投資家ユーリ・ミルナー、元テック幹部でアンドリーセン・ホロウィッツのボードパートナーだったスティーブン・シノフスキー、スタートアップ創業者を彼に頻繁に紹介していたDay One Ventures創業者のマーシャ・ブッカーが含まれる(ブッカーは、エプスタインとの関係について以前のコメント要請に応じていなかった)。

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ミルナーは2011年にエプスタインと2度会っており、1度はニューヨーク市内のエプスタインの自宅、もう1度はパリのアパートだったとされる。ミルナーの代理人によれば、これらの面会は、エプスタインと親しい関係にあった投資家兼コンサルタントのイアン・オズボーンが仲介したもので、その後、ミルナーがエプスタインと接触することはなかったという。

オズボーンは、「エプスタインと会ったこと、あるいはどのような形であれ関わりを持ったことを心から後悔している。私は、彼の忌まわしく違法な行為を目にしたことも、認識していたことも一切ない」と述べている。シノフスキーはフォーブスに対し、自身はいかなるベンチャー企業にも雇用されておらず、「自分自身のために働いている」と書面で回答した。

資料からはエプスタインが、ビリオネア投資家や創業者だけでなく、シード期のスタートアップ、大学教授、AI研究者へのアクセスも強く求めていたことが見えてくる。2012年エプスタインは、イーロン・マスクに宛てたメールで「ロンドンのAI関連人物の件をリマインドしてほしい」と書き、当時ロンドンを拠点にしていたディープマインド共同創業者のデミス・ハサビスに言及していた。エプスタインの知人たちは会うべき教授の名前を挙げたほか、ドイツのAI研究者ヨシャ・バックのように大学や学会の様子をエプスタインに報告する者もいたようだ。

ヨシャ・バックは2015年、エプスタインに宛てたメールで「私の個人資金はまた底をついてしまった。もう1度助けてもらえないだろうか(このような依頼を恥ずかしく思っているが)」と書いていた。バックによれば、2013年から2019年にかけて、エプスタインは彼の生活費を負担していたという。バックはフォーブスに対し、「彼の価値観とは大きな隔たりがあり、この依存関係を終わらせることは常に優先事項だった」と述べ、「有罪判決後にエプスタインが関与した犯罪行為について、私は一切認識していなかった」とも書面で説明した。

ティールの助言に従った結果、巨額の利益を得る機会を失う

コインベースやヴァラー・ベンチャーズを除くと、エプスタインがテック業界の人脈を投資の成功につなげられた形跡はほとんど見当たらない。むしろ彼は、複数の案件で手を引いていた。

2014年、エプスタインはティールとのメールのやり取りの中で、当時評価額50億ドル(約785億円)だったスポティファイの持ち分を取得すべきかどうかを尋ねていた。「評価額50億ドル(約785億円)で、スポティファイに1億ドル(約157億円)分の出資を持ちかけられている。どう思う?」と彼は書いた。逆張り投資家として知られるティールは、この音楽配信サービスへの投資を見送るよう助言し、自身が共同創業した防衛テック企業パランティアへの投資についても、「価格が市場水準を下回っている」として否定的な見解を示していた。結果として、これは驚くほど的外れな助言だった。スポティファイは2017年に評価額270億ドル(約4.2兆円)で上場し、パランティアの時価総額は、ナスダック市場で一時4940億ドル(約77.6兆円)に達していた。

2017年までに、エプスタインはスポティファイを見送った判断が誤りだったと気づいたようだ。資料によれば、彼は2018年のIPO直前、ヘッジファンド兼スタートアップのハニカムが設けた特別目的事業体(SPV)を通じて、2017年に100万ドル(約1億6000万円)を投資するよう会計士に指示していた。最新のメールによると、エプスタインは、元ポイント72の投資家であるデビッド・フィゼルが運営するハニカムに、少なくとも7000万ドル(約110億円)を投じていた。フィゼルの代理人であるギブソン・ダン法律事務所の弁護士、リード・ブロドスキーは、2019年の有罪判決後、ハニカムはエプスタインからの投資の大部分を処分したと説明した。

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翻訳=上田裕資

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