欧州

2026.02.06 15:15

スウェーデン医療現場からみた日本医療、過剰受診と配分の歪み。どうする安心担保

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総選挙も迫るなか、社会保険費はじめ医療費の問題が議論されている。たとえば高額療養費制度の再設計をどう考えたらよいのか。われわれ国民にも託された問題は大きい。

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では果たして、海外からみた日本の医療制度はどうか。以下、スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科の医師宮川絢子博士に、スウェーデン医療の現場から主に同国との比較で考えていただいた。


租税負担の割合は低、社会保険料への依存高

日本の国民負担率を構成する要素を見ると、スウェーデンと比べて際立つ特徴がある。それは、租税負担の割合が低く、社会保険料への依存が極めて高いという点である。一見すると、社会保険料は「累進性」、すなわち所得に比例して支払う公平な仕組みに見える。しかし、制度の細部と実態を見ていくと、むしろ低所得者ほど生活を圧迫されやすい逆進的な構造が浮かび上がる。さらに近年進められている高額療養費制度の見直しは、低所得者だけでなく、平均的な収入のある国民でも厳しい状況に追い込まれるリスクがある。

本稿では、日本の社会保険料と高額療養費制度が抱える問題点を整理し、スウェーデンの制度と比較しながら、「本来あるべき医療保障とは何か」を考えていきたい。

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社会保険料は「累進的」に見えて、実態は「逆進的」

日本の社会保険料は名目上、賃金に比例して徴収されるため、制度設計だけを見れば累進的とされる。しかし、実際の生活への影響を考慮すると、その性格は必ずしも累進的とは言えない。

低所得層にとって社会保険料は、可処分所得を直接削る固定費である。保険料の支払いによって、

• 生活必需品に充てる資金が減少する

• 教育費や医療費の自己負担が相対的に重く感じられる

• 将来への備えが困難になる

といった問題が生じやすい。

加えて、社会保険料の累進性自体は弱い。各種統計をみると、所得に占める社会保険料の割合は、むしろ低所得層ほど高い傾向にある。たとえば、年収200万円台の世帯では所得の約15〜20%が社会保険料として徴収される一方、年収1000万円前後では約10%にとどまる。さらに、年収5000万円以上の高額所得者が負担する社会保険料は、所得の数%に過ぎない。

このように、制度上は賃金比例という「累進的」な仕組みであっても、実際には低所得者ほど生活への負担感が大きい、逆進的な構造が生じている。

日本では租税による所得再分配が相対的に弱く、社会保障財源を社会保険料に依存する傾向が強い。その結果、所得が低いほど社会保険料が生活を圧迫するという構造が固定化されている。

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文=宮川絢子

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