アイデアを引き出し、生かす組織をどうすればつくれるのか? クリエイターからヘッドハンターまで、注目の人物に話を聞き、「コンテンツの力」をビジネスに生かす方法を探る連載の第二回。前回に続き、『ダウンタウンDX』(読売テレビ)などの人気番組を手掛けてきた名物プロデューサーの西田二郎氏が登場。
バラエティ界のヒットメイカーがもつ「信じ・信じさせる絶妙バランス」と、現場にアクセルを踏ませる「心理的安全性の高い環境づくり」のノウハウには、チームやプロジェクトを率いるリーダーはもちろん、人材育成を担当するビジネスパーソンも参考にできるヒントが、多く眠っていた。
立場なんて関係ない、掟破りの「全員主役」の番組づくり
テレビ番組の制作には、企画・進行を担当するプロデューサーやディレクター、構成作家に加え、技術面を担うカメラマンや音声、照明など、実に多様な職種のスタッフが関わる。テレビ業界に30年ほど携わってきた立場としては、現場には厳格な階層構造が存在することが多いという認識がある。しかし、西田氏はそれを取っ払って、あらゆる立場のスタッフから公平にアイデアを集め、制作を進めていたという。
「プロデューサーだろうがADだろうが、基本は(制作の一員であり)一緒。もちろん指揮系統もあり、それぞれ仕事内容も違いますが、メンバーから何か意見が出た時に立場を理由に意見を排除する理由は、1ミリもありませんでした」(西田)
そんな西田氏の姿勢を表す象徴的な出来事として、キングコング西野亮廣氏がMCを務めた深夜番組『ガリゲル』(読売テレビ)での一幕がある。人と人とのつながりをテーマにした同番組のコーナーで使うVTR中に、新鮮さを出すためにあえて無名のミュージシャンの楽曲を積極的に採用していたことがあった。
中には、後に全国的な人気を得る男性二人組のシンガーソングライターユニットC&Kの曲もあり、切なくも温かい歌詞とボーカルが企画にマッチして、視聴者から反響を呼んだ。そのきっかけは、ひとりのADからの提案だったという。
「スタッフに、自分が良いと思う音楽を持ち寄ろうと声をかけたんです。みんなで集まった曲を聴いたら、めちゃくちゃいいものがあって。誰が見つけたのか聞くと、ひとりのADが遠慮がちに手を挙げました。そして自信がなさそうに、でも具体的に『この曲をVTRのこの瞬間にかけたいんです……』と提案をしてきました。
とりあえず出しただけか、確信をもって提案したかは、顔を見ればわかる。表情の奥にある熱が見えたら、決まりです。『最高やん! この曲ならエンディングまでもっていけるで!』と言うと、現場は一気に盛り上がりました」(西田)
西田氏は、少しでも良いアイデアを出したスタッフを、全力で肯定する。するとスタッフには意欲が沸き、現場には立場を超えた一体感が生まれるのだという。
「良いものは良い、間違っていないものは間違っていないと伝える。そうしないと現場は不安になります。スタッフにアクセルをしっかり踏んでもらうことは、プロデューサーの大事な役割です。するとブレイクスルーが起き、業界では次第に『西田がプロデュースをしている番組で仕事をすると当たるよね』という幻想が生まれ、スタッフは僕が良いも悪いも判断してくれると思って、企画を出しやすくなります」(西田)
また、西田氏は良いアイデアや情報を見つけた時には、それを提供した人の年齢や立場に関わらず感化され、自らの思考や行動にどんどん取り入れていく。一方で、スタッフから良くないアイデアが出てきた時には、極力それを否定するようなマイナスのフィードバックをしないように努めてきたと話す。理由は、バラエティー番組を主戦場にキャリアを築いてきた西田氏らしいものだった。



