Jリーグと肩を並べる集客に
W杯終了後もその熱は冷めなかった。W杯直後の国内リーグであるトップリーグ(当時)2020シーズンが開幕した1月12日、神戸ユニバーシアード記念陸上競技場で開催された神戸製鋼コベルコスティーラーズ対キヤノンイーグルス(いずれも当時)の試合では、前季の4倍を超える2万3004人の観客を動員。また、翌週18日の第2節、豊田スタジアムで開催されたトヨタ自動車ヴェルブリッツ対パナソニック・ワイルドナイツの試合には3万7050人が集まり、トップリーグ過去最多観客数として記録された。(残念ながらこのシーズンはコロナ禍で中断・終了となった。)
2022年にトップリーグが発展的解消し誕生したジャパンラグビー リーグワンも国内のラグビー熱の受け皿となった。最初のシーズンとなった2022年はコロナ禍の影響を受けたものの、5月29日のプレーオフトーナメント決勝、東京サンゴリアス対埼玉ワイルドナイツ戦には国立競技場に3万3604人が集まった。
以降、プレーオフトーナメントの決勝は観客数を伸ばし続け、2024年には国立競技場に5万6486人を集めており、サッカーJリーグが2025年5月11日の鹿島アントラーズ対川崎フロンターレ戦で記録したリーグ戦最多の5万9574人と比較しても遜色ない数字となっている。もはや“にわかファン”はサッカーや野球、バスケットボールを観戦して楽しむ人々と肩を並べる「ラグビーファン」へと転じていると言えるのではないだろうか。
「ノーサイドスピリット」を世界へ
土田会長はこうした流れにさらに勢いをつけるためには、もう一度W杯を日本で開催することが必要だと訴える。
開催に向けては、まだ整理すべき点もある。W杯は、2027年にはオーストラリア、その4年後の2031年はアメリカ合衆国で開催が決まっている。2035年が日本開催になると、これまでに例のない3大会連続でヨーロッパ以外での開催となる。サッカーのヨーロッパ選手権やワールドカップなど、複数国による共催もトレンドとなっており、ラグビーの世界的普及を考えると日本も単独ではなくアジアでの共催という可能性もあるかもしれない。また、現状は日本のほかにどこか立候補してくるのか、統括団体のワールドラグビーが大会運営にどのような条件を求めてくるのかは分かっていない状況だ。
ただ、土田会長が明確にするのは、日本での開催を通じて世界に届けたいメッセージだ。「さまざまな社会課題を抱える時代だからこそ、日本ラグビーに根付く精神、お互いをたたえ、リスペクトする『ノーサイドスピリット』。この言葉こそ、ラグビーを通して未来に伝えていきたい」。
「ノーサイド」は、かつてはラグビーの“試合終了”を示す言葉だったが、現在世界ではほとんど使われていない。一方で、2019年大会で日本代表が見せた、試合が終了すればお互いの健闘をたたえリスペクトするという「ノーサイドスピリット」は、世界のラグビー界に強い印象を残した。2035年大会では、かつてはラグビー界で共有されていた「ノーサイドスピリット」を、ラグビー界にとどまらず、日本から世界中に発信するという。
2026年に設立100周年を迎えるJRFUが、次の100年に向けて伝えていきたい「ノーサイドスピリット」。その想いは世界に届くのか━━。キックオフの笛は吹かれた。


