アジア

2026.02.03 10:30

中国の不動産不況が都市にもたらす「信じがたい機会」──新天地はいかにして上海の象徴になったのか

Costfoto/NurPhoto via Getty Images

成功確率の低い計画から上海の名所へ

これとは対照的に、新天地と蟠龍天地を手がけたシュイオンランドの香港上場株は、過去5年間で価値の3分の1を失ったものの、今も時価総額56億香港ドル(約1100億円)を維持している。シュイオンランド会長の羅康瑞(ビンセント・ロウ)も、現在の『リアルタイム・ビリオネア・リスト』で推定資産15億ドル(約2300億円)の億万長者であり続けている。新天地には毎日数千人が訪れ、ルルレモンのような世界的ファッションブランドに加え、地元経営のレストランも軒を連ねる。ウッド自身も、トンプソンがハーバード・スクエアの旗艦店から興したライフスタイルチェーン店、Design Researchに由来する名称を持つバー、「DR」によく姿を見せている。

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上海を拠点とするE-House China R&D Instituteのデータを引用し、中国政府系紙のチャイナ・デイリーが1月15日に報じたところによると、2025年の中国のGDP成長率は輸出の好調さにより前年同期比5%に達した一方、主要100都市における在庫住宅の平均販売期間は27.4カ月に及んだ(2025年11月時点)。これは、市場が均衡していると見なされる上限である14カ月の2倍に相当する。また、地方都市では、購入者を見つけるまでに3年超を要するとされている。

世界の都市も同様の課題に直面している

もっとも、不動産の供給過剰に直面しているのは中国だけではない。例えばニューヨークでは、パンデミックで生じた不動産の供給過剰を受け、商業用不動産を住宅へ転換する動きが加速している。代表的な事例としては、25 Water Streetのオフィスタワーを1000戸超の賃貸住宅に転換するプロジェクトが挙げられる。

中国全土へのコミュニティ主導モデルの展開

新天地と蟠龍天地以外にも、ウッドは「働く」と「暮らす」を融合させる設計として、中国中部の都市、武漢の中心部にある中山大道を手がけている。同地は中国でも有数の古い商業拠点の1つであり、約254ヘクタールの老朽化した空間が、活気ある複合用途地区へと生まれ変わった。官民連携の一環として、多くの地元住民が店舗や住宅を改修しながら住み続けるよう促されたという。

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また、蘇州と上海が浙江省と接する境界付近では、ウッドのマスタープランに基づく政府主導の新プロジェクトが進行中だ。その面積は4万4055平方メートルに及び、クルーズ船ターミナル併設ホテル、オフィス、アパートメントなどが建設される予定だ。さらに、上海の浦東新区にある横沔老街では、国有企業の中国金茂控股集団(チャイナ・ジンマオ・ホールディングス・グループ)が、環境に配慮した手法で古い町並みの風格と文化を融合させる開発を進めている。

これら2つのプロジェクトはいずれも、武漢や、広州の恩寧路での別の著名プロジェクトと同様、地元住民や小規模商店を結び付ける官民連携を基盤としている。「隣人が隣人を助け合い、それぞれが独自のアイデンティティを持つより良い地区が、都市の中に、より良い都市をつくる」とウッドは語った。

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翻訳=江津拓哉

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