教育

2026.03.12 14:15

あの頃の学校、ビニール袋はめた腕相撲を忘れない。『がっこうとコロナ』刊行

絵本『がっこうとコロナ』(松下隼司作、オクダサトシ絵、教育報道出版社刊)より

左右対称のページに込めた「失われた日常」と「再生」

こうした過酷な制限下で、子どもたちが何を感じ、どう生きていたのか。その真実を風化させたくないという思いで2025年12月末に形にしたのが、絵本『がっこうとコロナ』(松下隼司作、オクダサトシ絵、教育報道出版社刊)です。

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 この作品は、文を私が担当し、絵をダンサー・役者・絵本作家であるオクダサトシさんが担当しました。オクダサトシの描く、力強くもどこか切ない絵によって命を吹き込まれました。オクダさんと私がこだわったのは、全編を通して「左右対称の2ページ」で対比させる構成です。右側の「コロナ前」と、左側の「コロナ禍」。見開きでその落差を突きつける構成は、子どもたちがどれほどの変化を静かに受け入れてきたのかを雄弁に物語ります。

しかし、その対比の果てに私たちが描きたかったのは、悲しみではありません。左側の「制限」のページの中で、子どもたちが自ら生み出した、腕にビニール袋をかぶせて肌が触れないようにして行う「腕相撲」のシーンです。

高学年になると、どうしても「男女の壁」ができがちです。しかし、この時は違いました。互いに触れ合うことが制限されていた日々の中で、ビニール袋一枚を介して得られた「他者のぬくもり」は、子どもたちにとって何物にも代えがたい喜びだったのです。

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「レディ、ゴー!」の合図とともに、男女関係なく、弾けるような笑顔で腕相撲に興じる子どもたち。コロナ禍の制限と、それを乗り越えるためのアイデアが、結果として男女の仲、そしてクラス全体の絆をかつてないほど深く結びつけてくれた瞬間でした。

私はこの絵本から、印税等の利益を一切受け取らない形で出版することに決めました。これは一人の教師として、あの日を共に戦った子どもたちへの敬意であり、この「逆境を喜びに変える力」という宝物を、利益を超えたメッセージとして一人でも多くの親子に届けたいと願ったからです。

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文=松下隼司 編集=石井節子

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