イランから反体制デモ鎮圧に関する情報が少しずつ漏れ伝わってきた。正確な死者数は依然として不明だが、今回の事態は、イランで抗議デモに参加した市民に対して振るわれた組織的暴力の中でも史上最悪の結果のひとつに数えられるのは既にして明らかだ。
米誌タイムは1月25日、イラン保健省高官の情報として、1月8日と9日の両日だけで最大3万人が虐殺された可能性があると報道。治安部隊がこの2日間にあまりにも多くの人々を殺害したため「国が有する遺体の処理能力を超えた」と伝えた。
同日、ロンドンに拠点を置くペルシャ語衛星放送局「イラン・インターナショナル」は、治安部隊が2日間で殺害したイラン人は3万6500人に上ると報じた。機密文書を編集局が精査してまとめた数字だという。さらに同局はこれを「街頭抗議活動における民間人虐殺として、2日間では史上最大かつ最も血なまぐさい弾圧」だと評した。
カナダのマウント・アリソン大学政治・国際関係学部のジェームズ・ディバイン准教授は、「イラン・インターナショナルは反体制派のメディアであることを忘れてはならない。提供される情報の扱いには慎重になる必要がある」と指摘。「現時点では、犠牲者数はまったく不明だ」「イラン政府による情報遮断のせいもあるが、抗議デモと死者(の発生現場)が全国数千カ所に分散していたためでもある」と説明する。
その上でディバインは、米国を拠点とする「人権活動家通信(HRANA)」が、この前例のない弾圧の「犠牲者を体系的かつ証拠に基づいて記録する取り組み」を進めていると述べた。本記事の執筆時点で、HRANAは少なくとも6000人の死亡を確認し、さらに1万7000件の事例を調査中だ。
「これらの事例が確認されれば、死者数は2万3000人に達する。イラン・インターナショナルの推定よりは少ないが、まさに戦慄の数字であることに変わりはない」とディバインは語った。
中東でも前例のない規模の虐殺
いずれにしろ、現代において最も悪名高い抗議デモ弾圧と比較しても、今回イランで起こった虐殺はその規模と残虐性において前例のないものであったことが窺われる。たとえば、2011年に始まったシリアの恐ろしい内戦では14年間で50万人以上が殺害された。しかし、イラン政府の支援を受けてシリアに独裁体制を敷いていたバッシャール・アサド前大統領でさえ、一度の弾圧や2日間という短い期間でこれほど多くの非武装の民間人を殺害したことはなかった。



